こんにちは、遊佐です。
以前に2000年代のメンズファッションを振り返る記事を書きました。
今回はそれに続く記事として、2010年代を振り返っていきます。
当然ながら学生時代を長く過ごした2000年代よりも、社会人として20代30代を過ごした2010年代の方がファッションに色濃く触れる機会が多かったわけなので、コンテンツ量は前回よりも大幅にアップしました。
記事の構成は最初に全体の概要、その次にその詳細を見ていき、最後に当時を象徴するキーワードやアイテムについて解説する形になっています。
当時自分がやっていたコーデの画像なんかも貼っているので、皆さんも当時はどんな格好をしていたかなと振り返ってもらえる時間になれば嬉しいです。
- 2010年代のメンズファッションについて知りたい
- 当時、どんな格好をしてたっけ?
【ついていけた?】2010年代のメンズファッションを振り返る
カジュアル化
2010年代のファッションを振り返ると、トレンドが変化するスピードが異常に早かったように思います。
その中でもターニングポイントになったのが、2015年前後から現れだしたファッションのカジュアル化。
2010年代前半はジャケット着用、そしてシャツをタックイン、そしてそしてスリムパンツを穿いて、足元は革靴。今からするとかなりドレス寄りなカジュアルスタイルが流行っていました。
これが当時のワタシのコーデです。10年前のファッションとなるとさすがに懐かしさが出てきます。
全身細身でキメキメですね。
ところがですね、2010年代中盤にさしかかる頃から、ゆるい格好を提案するメディアが出てきました。
僕が記憶している限り、2014年に雑誌OCEANSが発した造語「ブスカワパンツ」がその先駆けだったように思います。
それまで股上が浅いスリムサイズのパンツが主流だった中、股上の深いダボっとしたパンツをブスカワイイと称して特集を組んだんですよ。
同時期ぐらいからピッティでもプリーツパンツを着用する人を見かけるようになり、どうやらファッションに何か変化が起きようとしているなという空気を感じたのを今でも覚えています。
あれよあれという間にゆったりとしたパンツが主流になっていきました。
スリムフィットは2000年代からずっと続いてきた流れだったので、本当に久しぶりの大きな変化だったと思います。
この変化は、それまでのタイトフィットやカチッとキメるファッションに対する反動で起きたのものでしょう。キメるファッションにきっと皆疲れていたのかもしれませんね。
そしてこの流れは今のオーバーサイズへとつながっていきます。
ミックスコーデ
キメるファッションから脱却し、肩の力を抜いたリラックスしたファッションにシフトしていくわけですが、そんな中で生まれたのが2010年代を象徴するミックスコーデ。
以前まではトラッド、ストリート、アウトドア、スポーツ、モードといったそれぞれのカテゴリー内だけでコーデを組むのが一般的でしたが、カテゴリーを横断してコーデが組まれるようになり、スポーツミックスやアウトドアミックスといったキーワードが生まれました。
- ジャケットにトラックパンツ合わせ
- シェルジャケットにドレスパンツ合わせ
- モノトーンテイストを取り入れる
2010年代半ばぐらいまでは、クラシックなコートに合わせるのは細身パンツ、革靴がデフォでした。もちろん今やっても全く問題ないんですけどね。
これがいわゆるスポーツミックスで、ダッフルにイージーパンツ、ボリュームのあるスニーカー合わせです。しれっとモノトーンテイストを織り込む。
こんな具合に、それまでの価値観を覆す様なコーデが目立ち始め、カテゴリーの境界線が曖昧になっていきました。
奇しくも時代ではジェンダーフリーや多様性といった言葉が声高に叫ばれるようになってきており、そんな中でのファッションだと考えると腹落ちできるような気がします。
スニーカー人気
ファッションをカジュアル化させるダメ押しの一手になったのがスニーカーでした。
きっかけの年は2017年。バレンシアガの「トリプルS」やオフホワイト×ナイキのコラボシューズがリリースされスニーカー人気を再燃させます。
皆さん街中歩いていて、そういえばいつの間にか女性も男性もみんなスニーカー履いているなと思ったことありませんでした?
この頃ぐらいからサラリーマンの服装もカジュアル化してきており、同時期ぐらいにスポーツ庁がスニーカー通勤を公式に推奨するまでに至っている。
コロナ禍でスーツが売れなくなったと言われていますが、すでにこの頃からスーツの売り上げはガタ落ちでした。
一方で
カジュアル化が進む一方で、ドレスクロージングではまた違った変化が生まれていました。
こちらもやはり2015年前後がターニングポイント。
大きく分けると前半は派手。色柄が際立つイタリアカラー全開のファッション。
ロングノーズのシューズ、ドゥエボットーニのシャツが流行るなど、良くも悪くもギラギラしていた感じです。
しかし後半に向かうにつれて、クラシック回帰、英国調、モードというキーワードがトラッドの世界に入ってきました。
その結果、ギラギラした雰囲気は消え失せ、大人の余裕漂うエレガントなスタイルへと変化していきます。
その変化の象徴となったのがやはりパンツ。
それまでのノープリーツのタイトフィットにかわり、プリーツ入りのエレガントなフィッティングが主流になっていきます。
デザインもサイドアジャスター、ベルトレスなどのサルトリアテイストといったものになり、3Pスーツをビシッと着る人も増えました。
プリーツパンツが主流になりタイトフィットからの脱却がはかられた点は先に話してきた流れと同じですが、違う点は「カジュアル化」ではなく逆に「ドレス化」、「クラシック回帰」したというところですね。
スマホの登場
冒頭で述べたように、2010年のファッションはその変化するスピードが早かったのですが、その最大の要因はスマホです。
スマホが登場する前までは、ファッションの情報源は雑誌か、PC。
ネット社会がどんどん浸透していってはいましたが、いかんせんPCなので足回りが悪く、情報拡散力は今とは比べものにならないほど低かったです。
ところが2007年に登場したiPhoneが全てを変える。
徐々にユーザー数を伸ばしていき、2010年代前半には多くの人が当たり前のように持つようになり、いつでもどこでも欲しい情報を積極的に取りにいけるようになった。
そして極め付けがSNS,特にインスタグラムの登場。
世界中のセレブやファッショニスタが自分のファッションをインスタで発信するようになり、僕たち一般人が日々その情報をシャワーのように浴び続けることで、ファッションの現状をいち早くキャッチできるようになりました。
やがて情報をインプットするだけでなく自らも発信するようになり、それまで何者でもなかった人がいつの間にかインフルエンサーになっているという時代になったんです。
こんな時代、誰が想像できた?
スマホの登場でファッションを取り巻く環境が目まぐるしく進化し、2000年代には考えられなかった領域にまで来ています。
今後もITが指数関数的に進化し続けていくので、ファッションがITと関わっていく限り、また新たなフェーズに移行する日も近いでしょう。技術的特異点がやってくる頃にはどうなっているのでしょうね。
拡散力が高まった弊害といったら語弊があるかもしれませんが、みんな同じように見える「コピー」が同調効果によって大量生産されているのも事実なので、個性を少し加えてアレンジしてみるのがこれからのファッションのミソかもしれません。
同調と流行、そして差異はファッションを楽しんでいく上で、おさえておきたい要素です。
キーワード
【アズーロエマローネ】
2010年代を語る上でこのキーワードは欠かせないでしょう。
アズーロエマローネはイタリア語で「紺と茶」の意味。
2010年代前半から中盤ぐらいにイタリア発のこの色合わせがトラッドの世界で大流行し、どのメディアでもとにかくこのスタイルが打ち出されました。
各ブランドもこぞってこの傾向を取り入れており、ビームスのブリッラレーベルでも茶生地に青いペーンが走った生地(確かフェルラだったか?)のジャケットが予約待ちの状態だったのを今でも覚えています(僕は買えなかった)。
【プリーツパンツ】
2010年代を最も象徴するアイテムがプリーツパンツだと思います。
2016年、17年ぐらいに僕が気に入って履いていたパンツがこれ。
懐かしい。ハバーサックのリネン混2プリーツパンツ。ベルトレス、ウェストゴムという今存在しているパンツデザインの原型みたいなモデルです。とはいえハバーサックは元々こういうデザインのパンツを作っていたので、トレンドとは関係なかったわけですが。
はき倒した結果ボロボロになり、同じような素材感と仕様のパンツを今でも探しているのですが、いまだ見つかっていません。
プリーツパンツが出てきたと言っても実際に着用していた人は一部の服好きのみで、まだまだノープリーツパンツが主流でした。本格的に浸透し出すのはもう少し後、2019年ぐらいでしたかね。
【ラウンドトゥ】
シューズの形にも変化あり。
トゥがシャープなロングノーズが多かったですが、後半にいくにつれて丸みを帯びたラウンドトゥが主流になり始めます。
これは先ほど述べたドレススタイルのクラシック回帰に伴うもの。
クロケットのキャベンディッシュが大流行したのがその象徴だったように思います。
それまでほとんど脚光を浴びていなかったモデルが2015年頃に突如大ブレイク。
丸みを帯びた形としてUチップも注目を集め、グリーンのDOVERやウェストンのGOLF、パラブーツのシャンボードが人気でしたね。
僕も当時はよくDOVERを履いていました。
DOVERは仕事のジャケパン時に使っていたので、そのスタイルをすることがほぼなくなった今では登場シーンが完全になくなりました。
僕と同じ理由なのかは知りませんが、街中でDOVERを履いている人を見かけるのが本当に少なくなりましたね。
この頃は革靴をよくはいていたなーと改めて思います。
【クラシック回帰】
クラシック回帰は先ほども話したようにドレスクロージングにやってきた流れです。
2010年代前半はドレススタイルがカジュアル化していましたが、後半以降にプリーツパンツを中心としたエレガントなサイズ感が主流となり、チェンジポケット、グレンチェック、幅広のストライプといった英国調デザインも相まって、クラシックなスタイルに変化していきます。
回帰というのがポイントで、元々存在していたスタイルがまた戻ってきたんですよね。
ただし昔のスタイルがそのまま回帰したのではなく、螺旋的に回帰したことでモダンなクラシックスタイルになっています。
【モノトーン】
2010年代末期ぐらいにトラッドの世界にモードのテイストが入ってきました。
イタリアブランドでは珍しいとされていた「黒色」が使われるようになり、千鳥柄スーツに黒のタートルニットを合わせるようなモノトーンコーデが流行りました。これは今なお定番として残っており、僕も好きなテイストの一つです。
【ノームコア】
ノームコアは2013年ぐらいにニューヨークから入ってきた流れ。
ミニマルとはまた違った「普通」の格好をするのが流行ったわけですが、これは今では定番になっていますね。
僕もこの影響は割と受けた方で、今でもスタイルの土台の一部になっているような気がします。
これは2015年頃の服装。
無地で何の変哲もない洋服でコーデしてます。
シャツはマニュアルアルファベット。サイズ感がややタイトなのは時代性ですね。
パンツはエディフィス×フルカウントのコラボライン「PRODUCT F」から出たデニムで、一足早くプリーツ入りを履いちゃってます。気に入って2色買いしました。
流行ったアイテム
【チャッカブーツ】
2010年代の初期、クロケットのチャッカブーツ「チャートシー」が大人気でした。
特にダークブラウンのスエードのモデルが人気で、夏場でもガンガン履いている人多かったですね。
僕はチャートシーではなく、アンライニングモデルの「チャッカ」を愛用していました。
【シャツ】
今は圧倒的にTシャツのほうが人気ですが、2010年代はシャツの方が人気たったんですよ。
特にイタリアブランドのバルバ、フライなどが牽引し、ジャケットの下にTシャツを着るスタイルはけっこう難しかったと思います。
シャンブレーシャツやデニムシャツが流行っていましたかね。
ですがやがてその座はTシャツに取って代わられることに・・・。
【クラッチバッグ】
2010年代中頃ぐらいまでが全盛でしたかね。
ローファーにクラッチバッグがデフォみたいな感じでした。
シャンボールセリエやシセイのクラッチは特に人気でしたね。
実は個人的に今復活して欲しいアイテムの一つです。
【ジレ】
2016年頃の画像。
ラルディー二のブークレ素材ジレなんですが、これがめちゃ人気でサイズ用意してもらうの難儀しました。
クラッチバッグと同様、また身につけたいアイテムの一つなのですが、さすがにこのデザインで着る気はおきないので、今っぽく作り替えて欲しいなと。
【ダブルモンク】
2010年代初期はドレスシューズの筆頭と言っていいほど、オシャレな人は皆履いていました。
ストラップを一つ外すして履くというのがこなしでした。
徐々にフェードアウトしていき、本来?のストレートチップやセミブローグが復権します。
【タッセルローファー】
2010年代中頃にクロケットのタッセルローファー「キャベンディッシュ」が大ブレイク。一時期の流行りは落ち着いたけど、今でも定番として人気です。
オールデンのタッセルローファーも並行して人気でした。
それにしても当時のタッセル旋風はすごかったな。
【バルカラーコート】
ゆったりしたフィッティングのバルカラーコートが中盤以降に流行りました。
ボリュームのあるシルエットでロングレングスなデザイン。
ベルテッドコートも程なくして出てきましたね。
【ダッドスニーカー】
バレンシアガの大ヒットスニーカー「トリプルS」はまだ記憶に新しいのではないでしょうか?
見ればすぐにわかるほどインパクトのあるボリューミーなデザインで、街中で履いている人もよく見かけました。
ダッドスニーカーを流行らせたモデルで、他ブランドもそれに続く様にダッドスニーカー、もしくはそれに倣ったボリュームのあるスニーカーを出していくようになります。
ボリュームのあるスニーカーは個人的にもヒットしまして、それまで主力で使っていたスタンスミスがしばらくお休みになるまでになりました。
【オフホワイト×ナイキ】
2017年に発売されたこのコラボが大当たりして、オフホワイトと創業者ヴァージルの名前が一躍知れ渡りました。
先ほども少し触れましたが、オフホワイトはスニーカー人気を再燃させた2010年代を代表するシューズブランドで、その影響を受けたスニーカーブランドも多いんです。
モノによってはさすがにかなり懐かしく感じるものもあり、今それを使うと最悪ダサいなんて言われかねないなー。
まとめ
- 2010年代はファッションのカジュアル化が進んだ
- スポーツやアウトドア要素を取り入れたミックスコーデが確立
- ドレスクロージングでは逆にクラシックが回帰しエレガントなスタイルに変化
- サイズ感はタイトフィットからリラックスフィットに変化
- スマホがトレンドを大きく、そしてスピーディーに変化させた
2020年代はオーバーサイズのトレンドでスタートを切っていますが、やや子供っぽくなりがちなところがあるので、きっとその反動がやってくるでしょう。実際に少しドレス回帰し始めている兆候も見られますし。いずれにせよ楽しみですね。