こんにちは、遊佐です。
ここ数年でファッションにスニーカースタイルがすっかり浸透し、スニーカーを前提としたコーデ提案が多くなりました。ストリートだけでなく、クラシックやモードの世界にも波及し、ラグジュアリースポーツという枠組みも生まれています。
そんな中、最近では長らく続いたスニーカースタイルの反動で革靴スタイル復権の兆しが見えています。つまり新たなトレンドがやってくるわけですが、トレンド移行初期の段階においては以下のような定番的設問が足を引っ張るかもしれません。
「私服に革靴はダサいのか?」
今回のブログでは、この設問に対して徹底考察していきたいと思います。
考察に際しまして、まずは「私服に革靴はダサいのか?」という言葉をもう少しほぐしていきたいと思います。具体的にはここでいう革靴とは一体何なのかをまずははっきりさせようということですね。
世の中、特にファッション界では曖昧な言葉や言いまわしが多いので、設問の意図を明らかにしておくことで、それに対するイエスノーをはっきりと出していきたいと思います。
また普段からこのブログをお読みになられている方であればお分かりだと思いますが、僕自身、スニーカーも革靴も両方大好き(というか靴バカ?)ですので、一方の立場に偏ることなくお話し出来るはずです。
- 普段スニーカーしか履かない
- 普段何気なく革靴を履いているけど・・・なんかおかしい?
- 革靴を履くのが気恥ずかしい
【脱スニーカー】私服に革靴はダサいのか?
設問の意図
さて、表題「私服に革靴はダサいのか?」についてですが、言うまでもなくダサくない。街ゆく人を見ていたらそんなことは分かりきっていること。
じゃあなんでこんな表題が存在するのかというと、「私服に革靴はダサい」という設問の仕方がかなりざっくりとしているためで、本当に問いたいことが伝わっていないんですよね。
この設問の要点は、対局の位置にあるもの同士の組み合わせが大丈夫なのかということ。
私服の対局は仕事着。仕事着の象徴はスーツ。そしてスーツスタイルに用いられる靴は革靴。
つまり私服に仕事で使う靴を合わせていいのか?おかしいのではないか?ということを聞いているんです。
それを踏まえて改めて設問を設定しなおすと、こうなります。
「私服にビジネスシューズはダサいのか?」
「ダサいのか?」
ビジネスシューズとは?
改めて私服にビジネスシューズを合わせるのがダサいのか?ということだが、
はっきりダサいです。というかおかしいです。
その理由を話す前に、まずはビジネスシューズとは何かをはっきりさせておきたい。
量販店や百貨店に行くとビジネスシューズコーナーがあると思いますが、そもそもビジネスシューズというジャンルはファッション界には存在しない。
ビジネスシューズという英単語ももちろん存在せず、具体的にどういう靴を指すのかはも明確ではありません。ですが社会通念上ではサラリーマンが履く革靴ということになっており、なんとも曖昧な言葉なんですよね。
そしてこの曖昧さこそが私服にビジネスシューズはダサい、ひいては「私服に革靴はダサいのか」を独り歩きさせてしまっている。
というのもファッション界でスーツスタイルに合わせる靴を言い表す際は、本来「ビジネスシューズ」でなく「ドレスシューズ」という言葉が使われ、内羽根靴がスーツスタイルの基本になるのですが、巷のビジネスシューズコーナーでは内羽根以外にスリッポンやダービーなど目を疑うようなものが登場していることも少なくない。
この現状は、サラリーマンという人物像がドレスクロージングの知識がない人として一般的に認識されていることと紐付いています。実際「ビジネスシューズ」を履いているサラリーマンは、きまってスーツの着こなしがよくありません。
何故ダサいのか?
ところで「私服に革靴合わせがダサいのは、内羽根を合わせているからだ」という解説をよく見聞きします。つまりこの解説は、どんな靴を選ぶのかが肝要ということを言っているわけですが、これは答えとしては50点だと思う。
何故かというとこれだと説明できないことが多いからです。
例えば、なぜかビジネスシューズに含まれちゃってるスリッポンやダービーはカジュアル靴なので本来であれば私服に合うはずなのですが、おそらく私服に革靴ダサい説に該当してしまうでしょう。逆に高級で、綺麗にケアされてるドレスシューズの内羽根靴、例えばジョンロブのCITYⅡを仮にデニムに合わせてもダサいとは言われない。
何故か?
それは私服革靴ダサいを決定付けるのは「どんな種の靴なのか」ではなく、「どんな状態の靴なのか」ということだからです。
街中を行き交うサラリーマンの足元をイメージしてみてください。
ビジネスシューズ、つまり「サラリーマンが履いてそうな革靴」の状態は大体以下のようなものだと相場が決まっています。
- 革質がいかにも悪そう
- 人工的な光沢感
- 先が細く反り上がっている
- サイズが大きくがばがば
- 汚れや傷でよれよれ
- チープな雰囲気漂う
こんな状態なら内羽根どころかカジュアルモデルを履いてもダサいにきまってる。さらに言えば、そんな靴を履く人は洋服にも同様の傾向が見られるので、靴どうこうよりもコーデ全体からダサい雰囲気を発しているはずです。
同じサラリーマンでも「ビジネスシューズ」ではなく「ドレスシューズ」を履いている人もいます。では「ドレスシューズ」の状態とは
- 綺麗にケアされている
- 革質がよさげ
- ジャストなサイズ
- 品のあるシルエット
- 高級感がある
めちゃくちゃ高級な靴でなくても、サイズがきちんと合っていたり、綺麗にケアしていたり、品のある形をしているものならそれだけで美しく見えるもの。
そんな靴であればモデルを問わず私服に合わせてもダサいと言われることはまずない。
言うまでもありませんが、ドレスシューズを履いているサラリーマンの身だしなみは素敵です。
まとめると内羽根を合わすとダサいのではなく、「ビジネスシューズ」を合わせるからダサいということです。ダービーだろうがスリッポンだろうが、ビジネスシューズである限り「私服に革靴はダサい」のです。
ダサくないけど
逆に「ドレスシューズ」であればダサくないということなのですが、勘違いしてほしくないのは、ダサくないけどお洒落であるとは言ってないということ。
お洒落であるの指標の一つに「こなれ感」という要素がありますが、こなれ感を出すためには「張り切る」や、「頑張る」を感じさせない自然な装いをする必要があります。
つまり違和感を感じさせてはいけないということ。
先ほどロブのシティⅡの私服合わせを例に出しましたが、ダサくないとはいえ間違いなく違和感が出ますので、こなれたスタイルにはならないということです。
なぜ違和感が出るかというと、ストレートチップを合わせる洋服は本来スーツだからです。そんな靴を私服、つまりカジュアルな格好に合わせると違和感が出るのは当然ですよね。
ここでようやく「何を選ぶか」という話になってくる。
選ぶべき靴は、大きくはローファーとダービーの2種類。
そして必ず押さえておきたいポイントがトゥの形とノーズの長さ。
トゥが丸く、ノーズが短い方がカジュアル度が高いので、より私服に合わせやすくなる。
それでは次項にて具体的なモデルを列挙していきます。
選ぶべき靴
ローファー
ローファーを大別すると
- タッセルローファー
- ビットローファー
- コインローファー
の3種類。
タッセルローファー(crockett & jones / cavendish)
ローファーの中で僕が最も好きなデザインです。
タッセルローファーのカジュアルコーデ特集もしていますので、よかったら読んでみてください。
ビットローファー(enzo bonafe)
私服でビットローファーを履いている女の子よく見かけませんか?
けっこうカジュアルな格好で合わせているのですが、あれぐらいの感覚で気軽に使うくらいがいいかもしれない。
コインローファー(crockett & jones / boston2)
コインローファーはベーシックなデザインであればあるほどいい。
たまにソールがごつくなっていたりしてカジュアル狙いのものもありますが、あざと過ぎて萎えます。
ローファーは私服に合わせる革靴の大大定番です。そして先程話しましたように今回ご紹介したいずれのモデルもトゥの形が丸みを帯び、ノーズが短めになっているのでカジュアルスタイルとの相性がいいんですね。コインローファーなんかパーカと合わせちゃってるし。
ですがトゥがシャープだとそうはいかない。
例えばクロケットにはシドニーというコインローファーがあるのですが、こちらにはトゥの形がシェイプされたLAST 341が使われているんですね。341はコベントリーやケントなどの内羽根シューズにも採用されているドレス度が高い木型なので、それを使っているローファーは綺麗すぎるというわけです。つまりシドニーはカジュアルよりもジャケパンスタイルに向くということですね。
↑逆にこういうローファーは使いやすいのでオススメです。
ダービー
ダービーシューズ、すなわち外羽根のおすすめは
- Uチップ
- フルブローグ
Uチップ(j.m. weston / golf)
Uチップはいかにもカジュアルな形をしているので、一番私服に合わせやすいかもしれませんね。実際、私服革靴スタイルで取り入れている人が一番多いのではないでしょうか。パラブーツとか人気ですもんね。
ただuチップはもっさりとした印象にもなりやすいので、カジュアルに合わせ過ぎるとダサくなったりするので注意が必要です。
とはいえ気をつけたいポイントはやはりトゥの形。
カジュアルなUチップの中にもドレス度が高いものがあり、エドワードグリーンのDOVERがまさにそれ。
トゥの形がシェイプされてドレスライクなシルエットになっているのが分かるかと思います。こういうUチップはいわゆる私服には合わせにくく、ジャケパンスタイルの方が相性がいいでしょう。
私服には個人的にウェストンのゴルフ、パラブーツのシャンボード、クロケットのモールトンあたりがおすすめですね。
フルブローグ(crockett & jones / pembroke2)
フルブローグは内羽根のイメージが強いと思いますが、外羽根の作りがあるんですよね。ローファーやuチップほど注目されませんが、チャーチのグラフトン、クロケットのペンブローク、トリッカーズのバートンなど名作揃いです。
ただフルブローグダービーは茶系を選ぶとカントリーライクの土臭い雰囲気になってしまいがちなので、まずは黒色を選んで都会的な装いに舵を切るのがいいかと思います。
ブローギングの華やかさと黒のシックな雰囲気の組み合わせをカジュアルに履けるのがフルブローグダービーの良さで、個人的にも大好きなデザインです。
ちなみにフルブローグであれば内羽根デザインもおすすめですよ。というのはフルブローグ自体がフォーマル度が高くないデザインなので、カジュアルに使いやすいんです。
とはいえあくまでも内羽根なので、やはりここでもトゥが丸いものを選ぶということが大切。
チャーチのチェットウィンドやバーウッドがまさにそういう靴ですね。
チェットウィンドのLAST 173はぽこっとした形をしているので、私服にも合わせやすい。それでいてスーツに合わせると英国感満載でカッコいいんだよな。
チェットウィンドは本当にオススメ靴なので、またいずれ詳細にレビューしたいと思います。
今回あえて紹介していませんがプレーントゥもありです。ただプレーントゥはサラリーマンが普通に履いていることが多いので、それこそ差別化をして履かないと表題にあるようにダサい烙印を押されやすいので細心の注意が必要です。
大前提として
「私服×革靴スタイル」を楽しむポイントは、良質な革靴を用いることです。
革靴は洋服と違ってクオリティの差が見た目にハッキリと現れ、コーデ全体に影響を及ぼします。どういうことかというと、どんなに上等な洋服を着ていようが、靴が終わっていたらコーデも終わるということです。
逆に靴さえちゃんとしたものを用意できていれば、洋服はユニクロやZARAで十分だということです。これはユニクロやZARAが十分クオリティの高いものを提供できているという証でもあります。
これは洋服好きあるあるなのですが、予算が限られた中でドメブラ、インポートブランドの洋服に投資して、靴はおざなりになっている人をよく見聞きします。
趣味で自分だけが楽しむ範囲であればいいのですが、もし客観的に良い評価をもらいたいのであれば、この予算配分は真逆にする必要があります。
例えば予算が10万円であれば、パラブーツのシャンボードに7万円出して残り3万円で洋服一式を揃えればいいんです。クロケットのキャベンディッシュに9万円出して残り1万円をユニクロで揃えるのもありです。
もしこの予算配分を極端に感じられたのであれば、おそらくコーデにおける靴の重要性をまだよく理解されていないのだと思います。
1万円以下で買えるコスパ最高と謳われる革靴がありますが、確かにその値段でよく作れたなという驚きはあります。
ですが私服×革靴スタイルを評価して欲しいのであれば個人的には全くおすすめしません。
まとめ
- まずはビジネスシューズから脱却し、ドレスシューズという言葉に馴染むべし
- 内羽根だから「私服革靴スタイル」がダサいわけではない
- こなれたスタイルのためには、ローファーか外羽根を選ぶべし
- 共感してほしければ革靴への投資を絶対にケチってはいけない
サラリーマンの足元チェックしてみてください。