こんにちは、遊佐です。
街中で毎日一度は見かけるスニーカーがアディダスの「スタンスミス」。
ファッションに興味がありそうな人、そうでもなさそうな人などいろんな人が履いているシーンを見るたびに、スタンスミスが日常にいかに浸透しているのかが伺えます。
そんな誰もが履けるデイリーシューズですがファッション界においてはマストな存在で、ウェルドレッサーたちが足元に使用していることも珍しくありません。
スタンスミスが万人に人気とはいえ、性質の異なる人たちが同じ物を見て同じように感じることはないので、何故スタンスミスを履くのかの理由がそれぞれ違うはずです。
そこで今回のブログでは、スタンスミスが素人玄人双方に好かれる理由について話していこうと思います。
- スタンスミスは昔履いていたけど、今は履いていない
- 履いたことない。というか子供っぽくない?
- なんでこんなに人気なの?
【なぜ人気?】スタンスミスの流行りは終わったのかと思いきやループしていた
スタンスミス
まずはスタンスミスについて簡単におさらいしておきます。
スタンスミスは1971年にアディダスから発売されたスニーカー。
モデル名はアメリカのプロテニス選手「スタンレー・ロジャー・スミス」にちなんでおり、スタンスミスの原型である「ハイレット」をスタンレー氏が好んで履いていたことからスタンスミスの歴史は始まっています。
シュータンの顔・・・誰?といまだに知らない人もいると思いますが、スタンレー氏ご本人でした。
1991年には2000万足を超える販売実績をギネス認定され、世界一売れたスニーカーとしてその名を歴史に刻んでいます。
スタンスミスはそれ自体がブランドのようなもので、アディダスシューズの中でも異色な存在です。
流行りすぎ?
全盛期
スタンスミスは今でも人気ですが、個人的には2010年代半ばが特に凄かったように思います。今もですが多くのセレクトショップが別注をかけており、綺麗目コーデには欠かせないアイテムでした。お店側としても欠かせない存在だっと思います。
当時の僕はジャケパンやスラックス単体と合わせるスタイルを好んでやっており、正直流行りすぎてるなーと思いながらも、その使い勝手の良さからめちゃくちゃ愛用していました。
でもある時期からスタンスミスを全く履かなくなったんです。
そのきっかけとなったのがダッドスニーカーブームでした。
流行りが終わった
ダッドスニーカーの流行はまだ記憶に新しい方もいらっしゃるかと思います。
ボリュームがあってちょいダサい見た目のダッドスニーカーはファッション界に新風を巻き起こしました。
僕自身がガチのダッドスニーカーを履くことはなかったですが、トレンド期にアディダスの「YUNG1」をエストネーションで見つけて何気なく試着したところすごく気に入っったんですよね。
「YUNG1」はダッドスニーカーではないけれど程よくトレンドが入ったボリューム系スニーカー。コーディネートにおいて外しの意が入る、いわゆる抜け感を表現出来たので、お洒落がより楽しくなったのを今でも覚えています。
と同時にスタンスミスを履かなくなるようになりました。
あんなに気に入っていつも履いていたのに。
回帰
割と早期にダッドスニーカーブームは去りましたが、ボリュームのあるスニーカーというジャンルは残り、今や定番化しています。
僕も引き続きYUNG1を愛用していましたが、履き過ぎたせいか「普通」のスニーカーを履きたくなってきたんですよね。
まずは久しく履いていなかったキャンパスを引っ張り出して履き始め、ついにスタンスミスも再登場となりました。
特にスタンスミスは「やっぱり」イイなと。
「やっぱり」というのは、元々気に入って履いていたけど改めてその良さを知るという意味です。そのルックスの端正さはもとより一周回って分かるスタンスミスの良さがあったんです。
一周回って分かる良さ?最初は分からないものなの?
次項にて具体的にお話ししていきます。
周回する靴
気に入って着ていた、あるいは心酔していたブランドだったはずが、急に魅力を感じなくなる。しかし数年経ってから改めてその良さに気付くことってありませんか?
なんなら最初の頃には気が付かなった魅力をも知ることになる。
そしてそのブランドは大抵知名度があって、誰もが一度は通っていることが多いんです。
僕にとってスタンスミスはまさにそういう存在なんですよね。
僕は学生の頃に初めてスタンスミスを履きました。これが僕の記念すべきスタンスミス1周目です。
「学生は制服を着てスニーカーを履いて登校する」という日常生活の下でスタンスミスを履いており、当然ながらファッションの視点は持ち合わせていませんでした。そういう意味では、1周目は現在何の気なしにスタンスミスを履いている人たちと同じような感じです。めちゃくちゃこだわりはないんだけども、かわいいかもみたいな。
とはいえ数あるスニーカーの中からスタンスミスを選んでいたので、なんとなくカッコいいとは思っていたのでしょう。
その後はいつの間にかスタンスミスを履かなくなり、コンバースや革靴を履くようになっていました。
2周目は2010年代半ばで、1周目から約15年経っていたことになります。15年の間でトラッドスタイルや革靴沼を経て、ちょうどスポーツミックスを取り入れようかなとしていた頃でした。セレクトショップや個店でスタンスミスが置かれているのを見てジャケパンとの相性を再確認し、2周目に突入します。
言うまでもないですが、2周目はファッションの観点からスタンスミスをチョイスしました。
ですが先述したようにその後ダッドスニーカートレンドの影響を受けて再びスタンスミスから離れることになります。物足りなさを感じるようになったんですよね。
具体的にはスタンスミスのデザインはスマート過ぎる、綺麗に収まり過ぎているといった感じで、要するに面白みがなくなったということです。
この頃は今では定番であるプリーツパンツや深い股上のパンツなど「ゆるめ」の兆しが出てきており、ちょっと力を抜くといった要素がメンズファッションに入ってこようとしていました。個人的にもモノを見る枠組みに変化が出始めており、そんな時にダッドスニーカーの「ちょいダサい」見た目がスタンスミスとの対比でドンピシャでハマったのかもしれません。
そして数年後に3周目はやってきます。
一通りの景色を一旦は見終わったなと感じた2020年頃に、たまたまスタンスミスをウールのベルテッドコートに適当に合わせた格好をしたのですが、これが妙にしっくりきたんですね。
それまで僕はコモンプロジェクトのようないわゆる「ミニマルデザイン」と呼ばれるスニーカーこそ最高だと思っており、同じコート系スニーカーであるスタンスミスは後述していますが、少し子供っぽいかもと思うようになっていました。
でもそれはケツの青い若造による勝手な思い込み。つまり2周目においてスタンスミスに物足りなさを感じたのは、アイテムではなく自分が未熟だったから。
逆に言えば、2周目には見えていなかったものが見えるようになったということに喜びも感じました。
この話は普段意識せずにというか、なんとなくスタンスミスを履いている方にとってはまるで共感して頂けないかと思います。実際に昔の僕だったら絶対共感出来なかったはずです。
2周目時にスタンスミスを履いていたときは、スタンスミスをどこか意識しながら履いていたところがありました。周りからどう感じられていたかどうかは定かではないですが、「スタンスミスを合わせているんだよ感」が少しは出ていたのではないかなと思います。
何か一つでもモノを特別視して身に纏うと、どうしてもコーデ全体に堅さが出るものなんですよね。
でも今はスタンスミスをスタンスミスと意識せずに履けています。もちろんスタンスミスだからこそコーデに組み込んでいるという意図はありますが、特別視からではありません。
いわば仲は良かったけど一定の距離感はあった人とついに親友になったという感じです。
何がいいのか?
スタンスミスが誕生して50年余り。
時代は変わり続けているのに、いまだにその人気は衰えを見せずにいます。
移り変わりの激しいファッションの世界において、長く支持され続けているモノはえてして「本物」と呼ばれることが多いです。
魂のないもの、模倣、とってつけたようなデザインなど、この世にはとにかくモノが多すぎます。スニーカーは一体どれだけの数、種類があるのか分からないほどこの世に溢れかえっていますが、そのある意味混沌とした中で秩序を保てているスニーカーがスタンスミスなんです。周りの環境が変遷しようが築き上げたオリジナルのデザインに何の影響もありません。
端正なフォルムと、それに相反しそうなおじさんマーク。
こんなデザインは他にありませんし、思いつきもしないでしょう。
スタンスミスのデザインはここに極まっているといっても過言ではありません。
スポーツブランドのスニーカーとは思えないほどのデザインだなと改めて思います。
おじさんマークいらないと言っている人もいますが、そうするとスタンスミスって一体何なの?という話になってきます。そしてそんなリクエストを拾ったかのように別注とでおじさんをなくしているデザインがありますが、正直なんでそんなことするんだろという感じです・・・。
「本物」は表面的に捉えられがちなルールやトレンドとは一線を画しています。
ここ数年のコート系スニーカーの傾向として、ロゴなどを一切排した超シンプルなデザインが見受けられます。その点で見ると、スタンスミスにはシュータンのおじさんやヒールのロゴマークなどのデザインが入っており、現在のデザインからしたら異質です。
現代のシンプルなファッションが好きな人からしたら「スタンスミスは子供っぽい。大人のスニーカーはロゴなどがないミニマルなデザインがベターでしょ」と思ってもおかしくありません。
ですがもしそう思っている人がいるとしたら、残念ながらきっとまだスタンスミス1周目か2周目、もしくはスタンスミスを履いたことがない人だと思います。
ミニマルデザインは確かに洗練された大人に向きますが、念のために言っておくとミニマルデザインとはロゴが一切ないものや最小限のデザインを表面的に指すものではありません。
表現したいことを練り上げていく過程で、無駄、余計なものが取り除かれた末に生まれるのがミニマルデザインで、だからこそ洗練されているわけです。
そういう意味で、スタンスミスはミニマルデザインのスニーカーなんですね。
そして時代が変わっても受け入れられる本物のミニマルデザインだということです。
誤解のないように言っておくとロゴが一切ないデザインもミニマルです。
何が言いたいかというと、ロゴを完全に廃したデザインだけがミニマルでイケてるんだと盲目的にならずに、ミニマルとはなんぞやということに思いを馳せながらスタンスミスを適宜選択出来る懐の深さを身につけておきたいということです。
色々ごたくを述べてきましたが、スタンスミスをことさら神格化するつもりは毛頭ありません。着用する際にファッションスキルは求められませんし年齢の壁もありません。
敷居が全く高くなく、誰もが履ける。
そんな靴をファッション好きな大人が履くと、もっと楽しいよと話をしてきました。
まとめ
- スタンスミスの良さは一度では分からない。数年越しに分かる奥深さがある
- 世代を超えて愛される「本物」である。
- 敷居の低さと高度なファッション性をあわせもつ稀有な作品
別注品がかなり多くなっていますが記事中で述べたような微妙な別注も正直多いので、個人的にはオリジナルがおすすめです。