こんにちは、遊佐です。
今回のブログではJ.M.WESTON(ジェイエムウエストン) のシグネチャーローファー「180」をレビューしていきます。
これまで様々なローファーを履いてきましたが、180は唯一無二であり、革靴の名作だと思います。
こういう評価は既に普遍的なものになっており、誰もが180は最高だという安心感をもって相対すると思うのですが、実際何がそんなに良いのだろうかと問われると、「革質が・・・」とか「形が端正で・・・」というような、なんとなくの答えになってしまう方が多いのではないでしょうか?
今回のレビューは180の何が良いのかという点を踏まえながら進めていきたいと思います。
そして皆が悩むサイズ感問題についても重点的に解説していきます。いわゆる修行は必要か?どの程度のきつさが適切なのか?かかとの抜けはどうすればいいか?
サイズ選定にあたって、ゴルフや他メーカーのモデルとも比較していきます。
- J.M.WESTON(ジェイエムウェストン)の評判は?
- 180は何がそんなに良いのか?人気の理由は?履き心地は?
- サイズ感について知りたい。「かかとの抜け」や、「適正なきつい」とは何か?
- 痛いフィッティングは正解なのか?修行は必要か?
【様式美の靴】J.M.WESTON(ジェイエムウエストン) のシグネチャーローファー「180」をレビュー。サイズ感について徹底解説します。
J.M.WESTON
フレンチシューズ
J.M.WESTON(ジェイエムウエストン)の歴史は1891年にフランスでエドゥアールブランシャール氏が靴工場を始めた頃に遡る。
創業後、エドゥアール氏の息子ユージェーヌ氏が本格的な靴作り、主にグッドイヤー製法を学ぶためにアメリカの都市ウェストンに渡ります。
そして1922年には記念すべき1号店をパリにオープンさせ、名前は修行の地「ウェストン」にちなんで、J.M.WESTONとなりました。
その後しばらくしてGOLFが開発され、第二次世界大戦後には名作にして代表作の180ローファーが登場。
フレンチシューズのみならず革靴界の一角として確固たる地位を築き、今に至ります。
ウエストンは革靴ブランドの中で最もファッションアイコンになっていると思います。無類の革靴好きはもちろん、別段そこまででもない、でもファッションが好きという人たちをも魅了します。
ハンドソーン?
ウエストンの靴はグッドイヤー製法で作られていますが、通常あるはずのリブテープがなく、中底に溝を作り、いわば革製のリブを作ることで直接縫い付けています。
これはいわゆるドブ起こしで、ハンドソーン製法のやり方なんですよね。
リブテープを使わないので、グッドイヤーの欠点である返りの悪さや馴染みにくさが克服されます。
じゃあハンドソーンの靴と何が違うかというと、ハンドを使った部分の割合。
ハンドソーンは9部仕立てという、文字通り9割がハンドで、最後の出し縫いを機械で仕上げます。一方でウェストンはリブテープを使わずハンドの部分を増やしたものの、9部までには至っていないということです。
なのでハンドソーンではなく、ハンドソーンに近いグッドイヤー靴ということですね。
ウェストンの価格は高級革靴とされるブランドの中でも高い方に位置していますが、革質や製法の点を考えると、納得も出来ようということです。
180ローファー
様式美
180が評される際に、端正やエレガント、そして美しいという言葉が使われますが、正直このあたりの表現がしっくりきません。
確かにそうであるとも言えるのだが、どちらかと言うとこれらの表現はジョンロブやエドワードグリーンの方が妥当で、特にロペスはこれらの表現の極みであるように思えます。
180はそういう表現の類の靴ではない。
確かに端正でエレガントなんですが、朴訥した雰囲気を併せ持ち、スキをわざと持たせて完全無欠にし過ぎないようにしている感があります。
つまり造形美に焦点が当たっていないということで、僕はここにこそ180の様式美の魅力があると思います。そしてこういう靴に対して安易に美しいという言葉を使ってしまうと、とたんに安っぽく感じてしまうんですね。美しさの定義に立ち入るつもりはないのですが、これまで色々なローファーを履いてきたからこそ、「180は美しい〜」じゃないだろと思えます。
と、まずは180への個人的な思いを話したので、ディテールへと移りたいと思います。
ディテール
ウエストンは自社にタンナーをかかえており、革へのこだわりが半端ない。
きめ細かいボックスカーフが使われており、一目で分かる革質の良さです。
革はウエストンの上品さを演出する重要なファクターで、他社との差別化にもなっています。
トゥの高さは個人的に大好きな箇所で、ゴルフにおいても同様のディテールです。
コバの張り出しが大きめという印象を持たれる方も少なくないみたいですが、一般的なグッドイヤー靴としてはこんなもんだと思います。おそらく180がエレガントな靴であるという認識が強いためか、そことのギャップを感じるのかもしれませんね。
先ほども述べたように、180は完璧なエレガントや美を表現している靴ではないと思うので、なるべくしてなったコバデザインという感じです。
その点、ロペスのコバは張り出しが控えめで、まさにエレガント。
サドルの窓はカモメ型。ウエストンを象徴するディテールです。
サドル両端にはコの字のステッチが入ります。
ハンドによる丁寧なモカ縫い。
トライアングルモカで、山状のシャープなフォルムになっているのが分かると思います。一般的というか平らな拝みモカになっていないのが特徴の一つですね。
かなり細かいところですが、拝みモカのデザインの違いが全体の雰囲気にけっこう影響を及ぼします。
180らしさの一つ、トゥの縫い割。
ここは機械ですね。
見たところハンドはモカ部分だけで、あとは機械で仕上げてそうです。
先ほどハンドソーンに近いグッドイヤーと言いましたが、こういうところを見ていると・・・まあグッドイヤー靴ですね。ハンドソーンとは言えません。
とはいえステッチはとても綺麗に入っており、見応えがあります。
ソールの溝は伏せ縫い仕様。いわゆるヒドゥンチャネルですが、縦ドブのため切り込みがうっすら見えます。この箇所はあまり言及されていないみたいですが、ウェストンらしさの一つかなと。
シューツリーは純正をセット。
ウエストンラバーズ必携のアイテムです。
コーデ
フレンチクラシックが根幹にあるオーベルジュの名作バスクTシャツ「COCO」に、フランスの遺伝子が入るデヴィッドソンのベルトなど、奇しくもフレンチ縛りのようなコーデです。
180はデニムとの相性が抜群に良く、絶対に押さえておきたいスタイルですね。
180はショートノーズだなと改めて思う。
サイズ感
かかと抜けに関して
サイズは6/Dを選びました。
もう一つ茶色を所有しており、そちらはサイズ7Dなのですが今回はサイズをハーフ下げて6/Dにしました。
サイズを下げた理由は、かかとのフィッティングを高めたかったからです。
7Dでも問題ないフィッティングではあったのですが、より良いフィッティングを求めて今回サイズ変更した次第。ちなみにゴルフもサイズ変更を実行しています。一発でマイサイズを射止めるのは難しいですね。
結論、大正解。
6/Dこそがベストなサイズであると確信できています。
7Dと比べて少し履き慣らしが必要ではあったものの、いわゆる修行とは程遠いもので、1週間くらいで実用レベルにまで移行することができました。
ではフレッシュに180のサイズを選ぶにあたって、大切なこと。
それは3つのサイズを試すこと。
今回6/Dを選ぶに当たって、まず7Dと6/Eを最初に提案され、どちらも悪くないけど、ベストではない。ならば6/Dはどうかといったところです。
7Dと6/Eの二つは帯に短し襷に長しというやつで、左右どちらかのかかとのフィッティングが少し甘くなります。甘いというのは「かかとの抜け」のことです。
180含め、ウエストンの靴はかかとの作りが大きい。これは他のメーカーのものと比べても明らかで、日本人の足との相性はあまり良くないと思います。
が、それでも絶大な人気を誇るのは、そういったフィッティングが180の個性であるという風に前向きに捉えられているからでしょう。
とはいえ、かかと抜けがないように、できるだけフィットを突き詰めたいわけですが、最初はソールが硬いためどうしてもかかとが抜けやすいもんです。ですが履きこんでいくとソールの返りがよくなって、かかとがついてくるようになります。
が、皆を悩ませるのはフィッティング時のかかと抜けが、この類のものなのかどうかの判断がつきにくいということです。そもそもフィッティングが甘い場合は経年変化で改善されないわけですからね。このあたりはフィッターでさえ100%断定することができないので、自分自身の経験値が何よりも頼りになってきます。
そして左右どちらかというのもポイントで、必ずしも一方の足にだけフィッティングエラーが起こるわけではないということです。例えば7Dは左足が甘い、6/Eは右足が甘いというということです。よくある既製靴の場合、サイズ変更の際は長さだけを変えるだけなので、こんなことは起きません。ですがウエストンのようにウィズと長さを自由に組み合わせるということは、それはもう別の靴といっても過言ではないくらい足を支えるポイントが変わります。
ちなみに経験上、6/Eはいずれ靴べらなしに履けるようなサイズ感に変わっていくことが予想できました。180のEウィズは相当幅広に出来ており、見た目も正直美しくないので、早々に選択肢から脱落していますが、それでも最初のフィッティングは悪くないので、今気持ちよく履きたい方にとってはいいサイズかと思います。
しめつけに関して
「紐で固定できないローファーは最初のフィッティングはきついくらいがいい。だんだんサイズがゆるくなってくるから」
これは間違いないのですが、問題はきついの程度が数値化できず、個人の感じ方に完全に依存してしまうということです。
このきつさは「適正なきつさ」なのかどうかが分からない。しかも180に関しては修行という言葉がきつさのバーを一段上げてきます。
僕から言わせてもらうと、180だからといって修行の必要性は全くなく、他の革靴同様のフィッティングでなんら問題ないということです。つまり、足がしびれるようなしめつけ、痛さを感じるようなしめつけは論外で、少しでもそんな現象が起きているならサイズを変えたほうがいいでしょう。
逆になぜ180だけそんなに修行をするのかが本当に謎なんです。実際、今はそんなフィッティングをスタッフさんもすすめていませんしね。都市伝説のようなフィッティングです。
「きつい」ではなく、「タイトフィット」を体得しましょう。
革靴のタイトフィットを体得すれば、このしめつけが適正かどうかというのは分かるようになるので、ここは言葉よりも慣れろです。
GOLFと比べて
GOLFはサイズ6/E。180と比べて長さはそのままでウィズを上げています。
GOLFのサイズ表記は実は特殊で、UKサイズ換算でウィズが一つ大きく、そして長さが0.5小さく記載されてるんですよね。
つまり6/Eは実際は7/Dとなります。
180も記載に注意が必要で、ウィズ表記はそのままなのですが、UKサイズ換算で長さが1つ小さく記載されています。
つまり6/Dは実際は7/Dとなります。
まとめるとUKサイズ換算で、ゴルフと180は同じサイズを僕は履いているということです。
統計的にですが、このパターンは多いように思います。つまりゴルフに対して長さはそのままでウィズを一つ下げる。
もう一つ多いパターンはゴルフに対してウィズはそのままで長さがハーフサイズダウンするというもの。つまりゴルフが6/Eなら180は6Eになります。
もしゴルフをお持ちの方でこれから180を選ぶという方は、この2パターンをベンチマークにしておくといいかなと思います。
ウェストン以外のサイズ感についても記載しておきます。
【管理人の足の特徴】
サイズ | 26センチ |
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特徴 |
幅広でやや甲高 |
CROCKETT & JONES
※全てEウィズ。
LAST337(ハンドグレード) | サイズ7h |
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LAST341(ケントやコベントリーなど) | サイズ7 |
LAST348(ハラムなど) | サイズ7h |
LAST325(キャベンディッシュなど) | サイズ7 |
LAST375(キャベンディッシュ3など) | サイズ7h |
CHURCH’S
LAST 173 | サイズ7h |
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JOHNLOBB
LAST 4395 | サイズ7h |
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ENZOBONAFE
ビットローファー | サイズ7 |
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F.LLI Giacometti
LAST FG257 | サイズ41 |
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LAST FG498 | サイズ41 |
まとめ
- J.M.WESTONは製法、革質共に最高峰のフレンチシューズ
- 180はGOLFと並ぶ人気モデル。ウエストン様式が発揮された魅力的なデザインが光る
- デニムコーデは押さえておきたいスタイルの一つ。
- 自由度の高いサイズ選びは魅力だが、木型自体のフィット感は日本人と相性が良くないため、妥協点が存在する。それもまた魅力。
フィッティングだけなら他メーカーで優れているものがある。端正な靴視点であれはジョンロブがある。ですがそういった物差しを超越する魅力が180、ひいてはウエストンにありますね。