こんにちは、遊佐です。
40代、50代以上のおじさん世代、もしかしたら30代もそうかもしれません。
気が付けばジーパンを穿かなくなっていませんか?
昔メンズファッション誌が盛況だった頃は、イタリアンデニムとジャケットを合わせたルックがこれでもかと紹介され、それに倣って読者もよく穿いてたはずです。
スナップ集でも本当に多く見かけたほどの人気パンツだったのに、それがいつしか穿かなくなり、もっぱらスラックス系ばかり穿いている人が増えました。
皆さんもなんとなく肌感で感じていたことだと思います。スラックスに比べてデニムが野暮ったい、ややもするとダサいのでは?と思ってしまう風潮になっていると。
ではなぜデニムは穿かれなくなったのか?そもそもいつからデニム離れが起きたのか?やはりデニムはダサいのか?
今回のブログでは、デニムの立ち位置がこの20年間にどう変わってきたのか、僕たちがどう関わってきたのかについて話していきます。
そしてデニムこそ大人の男性にとって、めちゃくちゃおすすめなものだという話を最後にします。
- 40代メンズのデニムはダサい?
- もしかしてジーンズ穿いているのおじさんだけ?
- いつからデニム離れしてしまった?
- デニムを穿けるおじさんになりたい
【優等生を卒業】40代50代おじさんのジーンズスタイルはダサいのか?デニム離れしている大人メンズにこそデニムをすすめたい
プレミアムデニムの時代
今30代半ば以上の人で、2000年代から2010年代にかけてファッションを楽しんでいた人は、プレミアムデニムを大なり小なり通ってきたはずです。
ディーゼル、ヤコブ、シビリア、インコ、PTなど。ジャケットスタイルに似合う綺麗めスリムシルエットが特徴。ドメブラでも多くのブランドがデニムに力を入れてラインナップしていました。シルエット以外だと、スタッズが打たれたり、ダメージが入ったりと装飾性の強さも特徴でしたね。
2000年代は特にデニム色が強めでしたが、2010年代にかけて徐々にスラックスの人気も出始めます。いずれに共通していたのはスリムシルエットでした。
デニム離れが始まる
2015年くらいからトレンドに変化が現れます。
- ゆったりとしたプリーツパンツ
- 色柄から無地へ
- 英国調、モードの流れ
- 革靴よりもスニーカー、ラグジュアリースポーツ
スラックスのシェアがぐっと高まり、クラシカルなディテールを備えたプリーツパンツやグルカのようなミリタリー調トラウザーズ、他にラグジュアリースポーツ領域としてイージーパンツの台頭します。一方、デニム含む5ポケットパンツがメインストリームから外れていきます。
ニットジャケットにイージーパンツ、スニーカーのコーデは2010年代前半までは考えられなかったものでしょう。今は当たり前になったカテゴリーを横断するミックススタイルてす。
この頃にはデニムを穿くことがかなり減ってきていたのではないでしょうか。僕もプリーツスラックスやイージーパンツのどちらかで、デニムの登場は2割以下だったと思います。
2割以下で登場するデニムも、デニスラというスラックスデザインなわけですから、デニムらしいデニムとなると、ほぼ登場しませんでしたね。
この頃にはジーパンがダサいというか、今っぽくないという風潮になっていたと思います。
この時代に起こったトレンドはトレンドというよりも、ちょっと大げさにいえばパラダイムシフトに近い。ファッションのあり方、価値観を変えるほど大きな変化であり、多様性をはらむ現代ファッションの始まりでした。
デニム回帰へ
2020年代になって徐々にデニムが復活し始めます。また従来のスリムデニムに加えて、アメリカ的なストレートデニムを穿く人も出てきます。
重要な点としては、ストレートシルエットに加えてヴィンテージを踏襲したディテールなど、デニムらしいデニムが出てきたということです。美脚シルエットや装飾性にデザインを全振りしていたプレミアムデニムと大きく違う点はここです。
そしてこの頃にはクリーンなファッションが浸透してきます。
こういうやつですね。さっぱりとして、こてこてしない、くどくないファッション。
当初このクリーン領域においては、くどいアイテム代表のデニムが合わないこともあり、デニム離れに拍車がかかるのですが、やがてクリーンなファッションに合うデニムが出てきます。
それがワイドデニム。
作業着ではない、ヴィンテージデニムでもない、プレミアムデニムでもない、クリーンなデニム。
ジーンズくさくないジーンズということです。ワイドスラックスの延長上にあるデニムなので、デニム特有のくどさがありません。
今の20代以下の若者はプレミアムデニムを通らずスラックスで育ってきたはずなので、デニムなんておっさんくさいとしてこの年代層でもデニム離れが起きていたと思います。そこにワイドデニムが出てきた影響で、ずいぶんとデニム姿の若手を見かけるようになりました。
さて、以上がデニムの変遷になります。
プレミアムデニムの頃から今にいたるまで20数年の月日が流れています。
20数年も経てば、人の見た目はもちろん価値観も変わりますね。
デニム回帰できない理由
「くどい」
変遷からもわかるように、多くの人にデニム離れを起こさせた要因はトレンドという外部要因です。いつの間にか穿かなくなっていたというよりも、見えない力にスラックスの方へと意識を向けさせられていた形ですね。
「よし、じゃあ久しぶりにデニムを穿こうじゃないか」と思い立ったものの、ことはそんな簡単なものではなく、以前のように上手く穿けない、なんか似合わなくなったなと思う事態に陥っています。
理屈としてはこうです。
スラックス時代が6年も続き、この間にシンプル無地でさっぱり清潔感のあるファッションスタイルがしっかりと根づいた。
先ほども少し触れましたがデニムというアイテムはとにかく濃い、くどい。起源も歴史もうんちくも生地もデザインも、なにもかもが他の衣類とは一線を画しており、洋服の中でも特殊な服だと思います。
そんなアイテムから6年も離れてしまい、スラックスを使ったさっぱりしたコーデに慣れきっている。自分だけじゃない、まわりにも気付けばスラックス族がすっかり増えた。
そりゃデニムに対して昔のようなスタンスでいられなくなるのも当然です。
「慣れ」とはそれほど影響力を及ぼすもので、結局のところ、何が使いやすいかというと、スラックスでもデニムでもなく、慣れてるものなんですよね。
「青い」
アイテムのカジュアル度と年齢との関連もデニム離れの要因です。
スラックスはドレス、5ポケットはカジュアルという明確な違いがあるので、スラックスの方が大人っぽいアイテム。すると40代以上の男性にとってデニムが年齢的に違和感を感じるようになるのも当たり前なわけです。そして若い頃によく穿いてた人ほど、一旦デニムから長い期間離れてしまうと余計に若かりし頃のアイテムみたいに印象強化される。
デニムは青春の象徴のようなもので、いろんな意味で青いアイテムというわけです。
だからこそ成熟した大人世代にとってデニムは年齢ギャップを感じてしまう。
どのようにデニム回帰するか
スラックスを穿くスタイルに完全に馴染んでしまい、周囲にも同じような格好をした人たちばかり。そして年齢がデニム回帰への障壁になっている。
回帰するチャンスがいよいよなくなってくるのでは?と思ってしまうかもしれません。
ですが結論そんなことは全くなくて、以下がその理由です。
- オシャレな手本がSNSでいくらでも見つかる。大人になっても価値観は変わる
- 遊べる大人は魅力的
まずSNSと価値観について。
自分の周りににスラックス族しかいなくても、SNS界隈は別です。
オシャレなデニムスタイルが数年前に比べて明らかに増えており、良質な情報が沢山見つかります。
実際に僕も、デニムを穿きたいと思えるようなオシャレな着こなしをSNSで見かけ、またデニムを穿きたいと思うようになりました。
具体的にどういう着こなしに影響を受けたかというと、1900年代の往年の名優やファッションアイコンの着こなし、そしてそれにインスパイアされて現代的に体現している人たちの着こなしです。実際デザイナーも昔の文献写真にインスパイアされてデザインすることが多いですからね。そしてそれを僕ら消費者が見聞きし共感することで、デニムスタイルのムーブメントが起きる寸法です。
大人のデニムスタイルだなと思いましたね。以前なら青いと、若いと思っていた頃とは全く違う印象になっていました。
そしてそのデニムスタイルに使われているデニムは、デニムくさいデニムだということ。股上は深めでストレートという501XXのようなデニム本来の無骨な雰囲気を持ったアメリカンなデニムで、ジャケットコーデに合うような綺麗めですっきりとしたデニムとは異なるものです。以前ならあまり気分ではなかったのですが、今では完全にデニム選びの基準になりました。
40代以上がデニムを穿く意味
そして「遊べる大人は魅力的」についてです。
先ほどデニムは洋服の中でも特殊なアイテムであると話しましたが、それは一つにはデニムが「外しのアイテム」であることを意味しています。
大人は順当に大人っぽいスラックスを穿けばいいんだけれど、あえてデニムを穿くということです。
つまり遊んでるんですよね。
というのも、大人が大人っぽい服をきたら大人っぽく見られるのはある意味当たり前の話なんです。対して大人がデニムを穿くということは、大人が大人っぽくないアイテムをあえて用いることで生まれるギャップ=面白さを狙うということでもあります。
そしてこの面白さとは奇を衒う意ではなく、英語の「interesting」に当たるもので、興味深いということです。
なんだかめんどくさく、合理的ではない話だなと思った方もいるかもしれませんが、大人のデニムスタイルの魅力はこの合理性を超えたところにあり、そういうアイテムを楽しめる大人はとても魅力的に映ります。
そしてこれはデニムのカテゴリー内でも同じことが言えます。
例えば同じデニムでも股上が浅めで細身のすっきりとしたものの方が綺麗に見えるし、ジャケットスタイルにも持っていきやすいと考えがちなのですが、これも当たり前という話なんですね。デニムを使えていること自体は確かに遊べているのですが、もしその一つの選択しかないのであれば、まだまだ合理的な思考で動いているなという感じです。
ジャケットにすっきりとした綺麗めデニムを合わせるのももちろんいいのですが、そういうスタイルだったらデニムじゃなくてスラックスを合わせてもある意味いいわけで、そこをデニム本来の武骨でちょっと野暮ったいデニムを合わせることで面白くなるし、上級者感も自ずと出てくるでしょう。
脱「優等生」
そうまでしてわざわざ穿かなあかんのかいという話ですが、確かにデニム自体がわざわざ穿くものではないんですよね。
むしろ40代になってから前向きにデニムをやめたという人もいるでしょう。綺麗ではないし、生地は硬くて穿き心地は別によくないし、夏は暑いし冬は寒い。
使い勝手が良いとはいえず、もっと現代的なパンツがいくらでもあるので、そっちを選ぶのが合理的です。
これはデニムに限った話ではありません。
最新の車ではなくクラシックカーを好んだり、現行ではなくヴィンテージの時計を好んだり。決して使い勝手はよくないし無駄な作業が増えるし、そしておじさんくさいし笑。
でもなんでわざわざ関わろうとするのか?
それは、朝エンジンを何気なくかけた時に、あー今日もちゃんとかかったなーとふと笑みがこぼれたりする感覚を持ち得ているからです。
何が言いたいかというと、若い頃には持ち得なかった成熟した感覚でようやく楽しめる趣味性がデニムにあるということです。
またその趣味性とは子供のように夢中になれるようなものでもあり、それが遊び心を忘れない大人という合理性を超えた魅力に繋がります。
それを理解するには正当性や順当性が判断基準になっているような、いわば優等生の呪縛に囚われている限りは無理な話です。だからこそ合理的ではないデニムを楽しめると「真に大人の」という但し書きがつくのです。
大人の男性ファッションは合理的。
真に大人の男性ファッションは魅力的。
デニムは後者のために用意された、大人の遊び着です。
まとめ
- 20数年の期間でデニム、デニムスタイルへの価値観が大きく変わった。それを変えたのはファッション自体の大がかりなシフトチェンジ
- スラックス主体のシンプルさっぱりスタイルが根付いた昨今において、こてこてしたデニムが入り込む余地がなくなっている。また、若いときによく穿いていただけに、若者のアイテムという印象が強くなっている。
- デニムをおしゃれに穿きこなす情報をSNSでいくらでも集められる。そしてそれは実に魅力的だった。
- デニムは最高の大人の遊び着である。デニムらしいデニムを選ぶと尚、楽しい。
年を重ねるたびにより大切にしたい「魅力的」という言葉。もし自分は理屈っぽいな、頑固だなと思う節があれば、少し意識してみてはいかがでしょうか?