こんにちは、遊佐です。
先日、こんな記事を書きました。
基本的にブランドが擁する商品ラインナップには定番モデルというものがあるはずなのですが、定番を作らないブランドも存在します。
それがEYEVAN 7285というアイウェアブランド。
非常に人気の高いブランドですが、競合他社と明らかに違うところが、継続品を作らない=定番化させないという点です。
定番品を軸とするブランディングがセオリーとされる中、EYEVAN 7285はどうやって多くの支持を集めているのでしょうか?
その答えこそがEYEVAN 7285の人気に繋がっていると思うので、今回ブログでは個人的にも大好きなこのブランドの魅力について考察していきます。
そして定番がない中で次々と誕生する人気モデルを最後に紹介します。
- EYEVAN 7285の魅力とは?
- 何故定番モデルがないのか?
- 人気のモデルは?
【名作多数】EYEVAN(アイヴァン)7285の人気モデルを紹介!定番が存在しないブランドの大いなる魅力とは?
EYEVAN (アイヴァン)7285とは
「EYEVAN7285」は2013年にEYEVANの後継として誕生した日本のアイウェアブランドです。
「着る眼鏡」として日本の眼鏡業界をアイウェアファッションへと導いたEYEVANの哲学を元に、デザイナー中川氏の柔軟な発想から生み出されるデザイン、そして鯖江の技術力が合わさり、後継としながらも全く新しい圧倒的個性を作り上げました。
今では日本はもとより、世界的にも評判のアイウェアブランドとなっています。
シンプル、クラシック、ファッション性が高いeyevan7285をあえて一言で表すなら「精緻」。こだわり抜いた細部の仕様を見ていると「作品」のような印象を受けます。
生産効率といった言葉の対岸にいるような作り方になっていますので、当然のことながら完成に至るまで多くの工程を踏むことになります。
眼鏡作りは工程数がシンプルに価格に反映されますので、eyevan7285の価格帯は高めに設定されていますが、相応のクオリティを備えていると考えてもらっていいです。
ですが人によっては眼鏡にそこまで求めていないという人もいますので、このブランドがどういう人に刺さるかなと考えた時に、例えば革靴や機械式時計などが好きな人が浮かびました。
こういった物は時に工芸品と評されることがありますが、その精緻なディテールには敬意を込めて変態的と言いたくなります。普遍的な姿の中に見え隠れする技巧や意匠に心を奪われるんですよね。
EYEVAN7285はそういうモノづくりをします。
アルミケースのデザインが個人的に好き。眼鏡のパーツにも採用されている通称「EYEVAN7285ストライプ」のデザインがケースにも入っています。
EYEVAN7285には定番モデルというものが存在しません。つまり買い逃すと二度と手に入りません。稀に再生産に応じているようですが、基本的にはこのスタンスをとっているので、気に入った際は迷わず購入に踏み切ったほうがいいと思います。
定番モデルがない
EYEVAN 7285の特徴の一つとして、定番モデルがないということ。
アイウェアブランドには必ずといっていいほど定番があります。
- ジュリアスタートオプティカルのAR
- モスコットのレムトッシュ
- EYEVANのサドラーやWebb
- AYAMEのマンレイ
- レスカのPICA
他、定番とまではいかなくても、毎年継続して製造販売されるモデルも多い。
ところがEYEVAN 7285にはこういった継続品が一つもありません。
シーズンに登場してそれっきり。先ほども書きましたように、まれに再生産されることもありますが、それで終わりです。
多くのブランドが定番と新作で構成したコレクションを展開をする中で、EYEVAN 7285は何故継続品番を作らないのでしょうか?
ディレクターの方が実際にどう考えているのかは存じ上げないのですが、定番を作らない意図について考察していきたいと思います。
何故再生産をしないのか?
希少性を生む
再生産がされないということは、もう二度と手に入らないということでもあるので、買っておかなきゃと思わされる。
実際、取り扱い店や個人がブランド解説をする際に「再生産がされない」ということを必ずトピックとして上げるのですが、やはり買い逃さないようにという結びになることが多いんですね。
もう手に入らないと思うと、買わなきゃと思ってしまうのはある意味当たり前で、そんな本能にアプローチしてくる危険な存在です笑
ただし、そんなことができるのは限られたブランドのみ。
買わなきゃと思わせるだけの、高いブランド力が必要になります。
仮にそんな手法で販売出来ても、商品の価値が低ければその場限りになるかむしろ悪評が広がり、ブランドが育たない。なので本当に希少価値を持ってもらえるには、相応のプロダクト力を備えている必要があることは言うまでありません。
そういう意味では、EYEVAN 7285の商品には希少価値があります。仮に希少性を狙ってなくても、ブランド力があるので自然に希少性が備わっていくことなります。
差別化戦略
定番を作らないことで差別化を狙う。定番を作ることがセオリーなため、それと真逆の方針をとる。これもまたセオリーな戦略です。
他社と何が違うことをやると尖りが生まれ、その尖を皆が喧伝することでさらに尖り、ブランドの付加価値を生む。
とはいえEYEVAN 7285の場合は、この手の逆張りを利用する必要がないくらい、圧倒的なブランド力とプロダクト力(これこそが差別化)を備えているので、よくある一般論くらいで聞いておいてもらっていいです。
逆に定番しか作らないという尖もあり、1〜2品番くらいで運営しているメーカーもありますね。
人気を過熱させない
個人的にはこの要因が一番デカいと感じます。
例えば長年定番として販売していた商品が、いわゆるバズを受けて突如爆発的な人気を得る時がありますよね。
デザイナーにとってこれは喜ばしいことである反面、違和感というかちょっと冷めた目で見てしまうような心境でもあると思うんです。いわば本来の価値以上の評価を得てしまい、商品が自分の手を離れて一人歩きしているような状況です。過度に褒めちぎられて、それはちょっと言い過ぎでしょという感じです。
それに、特定モデルだけが過剰に脚光を浴びてしまうと、他のモデルが埋もれてしまいます。そのモデルがたとえ優れたプロダクトだったとしても、認知度の高いモデルが他にあったら、やはりそっちに目がいくというものです。
売れたらいいんじゃないのと思うかもしれませんが、過熱して膨れ上がった過剰人気はいつか弾けるもので、長い目で見ると決してよくありません。
こうなってくると、ちょっともったいないけど価値を壊しにかかったほうがよくて、一旦廃盤にするみたいな措置をとったほうがいいかもしれませんね。
でもそんなめんどいことをするなら、最初から定番なんて作らないほうがいいやと考える。精神的なところでいえば、過度に崇め奉るような俗っぽい世界から逃れたいとも言えますね。
定番デザイン
上記3つの意図で定番モデルを作らないとしても、定番という概念はブランディングにおいて絶対に欠かせません。消費者に訴えるには何か象徴となるものが必要だからです。
そこで登場するのが、「定番デザイン」という概念です。
つまり同じモデルを継続するのではなく、特徴的なディテールをブランドの象徴として継続するということです。定番モデルに比べて分かりやすさはありませんが、その分、空虚な人気の過熱を防ぐことができます。
ここで勘違いしてほしくないのは、腕時計のそれとは全く違うということです。
腕時計も次世代に移る時にディテールを踏襲させますが、根本的なデザインは同じです。シリーズ名が生まれるのがその証左です。
EYEVAN 7285の場合はそういったシリーズがなく、定型デザインというものがありません。
EYEVAN 7285には以下のような定番デザインが存在します。
- ミリタリー蝶番
- ウェリントン型ティアドロップ
- 1PINカシメ
- EYEVANストライプ
これだけでブランドの個性を十分に感じることができる特徴的なディテールで、いわゆるお家芸というやつですね。
【ミリタリー丁番】
ミリタリージャケットのパーツからインスパイアされたということで、ミリタリー丁番と名付けられています。
堅牢な作りでピンが抜けにくくなっていますので、そんな意味でもミリタリーという名前がぴったりくる仕様です。
見た目のさりげないアクセントになっているのいいんですよね。
【ウェリントン型ティアドロップ】
ウェリントンシェイプにティアドロップ要素を混ぜて、少し垂れたようなシェイプになっているのが分かるかと思います。
パント型にティアドロップを入れているものもあり、ティアドロップを混ぜ込むシェイプデザインが定番という感じです。
ぱっと見はスルーされそうですが、知っている人が見ればEYEVAN 7285だとすぐに分かるデザイン。
【1PINカシメ】
1ピンカシメもブランドのアイコンです。
1PINはそのシンプルな見た目からクリーンな雰囲気を作れる一方で、強度的に心配なところがあるのですが、EYEVAN 7285は特殊なヨロイパーツを用いることで、問題を解決しています。
ヨロイ部分がネジで固定されており、1PINカシメとの二重ロックになっています。
決して見せかけではない、機能面ありきのデザインです。
さらに2+1PINカシメという、3PINのうち1PINだけサイズが違うデザインもあり、これもブランドのアイコンになっています。
【EYEVANストライプ】
EYEVANストライプは眼鏡ケースに採用されているデザインです。
眼鏡ケースはブランドの象徴とも言えますので、印象に残る方も多いと思います。
眼鏡のディテールとしても使われており、画像のようにヨロイ部分にストライプが入っているモデルもあります。
こちらは先ほどご紹介したモデル「344」のディテールです。
他、テンプル芯にも同様の形状が使われるなど、さりげないアイコンになっています。
人気モデル
156
流麗な線使いが魅力のメタルフレーム。
ミル打ちといった装飾性や、リムロックの一体形成など、匠の技を味わえる1本です。
いわゆるフルビュー仕様で、視界もすっきりしています。テンプルへの繋げ方が美しい。
192
オクタゴンシェイプのメタルフレーム。
絶妙にアシンメトリーなシェイプで、顔にかけた時の一体感が半端ない。頂点がありつつ丸みを帯びたフレームデザインなど、芸術性の高さを感じる1本です。
小ぶりなサイズ感も相まって知的な印象が出ます。
344
ウェリントンシェイプにさりげなくティアドロップの要素が入っており、ややゆったり目のサイズ感もあいまって、きりっとしがちなウェリントンがどこか優しい印象に。
嫌味のないデザインなので、周りからの印象も良さそうです。
341
パント型ティアドロップのレンズシェイプ。
サンプラチナ製のカシメ飾りが特徴的で、古い家の屋根の瓦からインスパイアされたデザインだそうです。
さらにブランドオリジナルの2ベースガラスレンズが初期搭載されています。
光の当たり具合で表情が変わるガラスレンズ特有の色彩。
こちらは後日またレビューします。
数シーズン前のモデルであっても在庫のあるお店があるので、気になったモデルがあれば直営店から取り扱い店まで片っ端から問い合わせしてみましょう。
まとめ
- EYEVAN 7285は一見シンプルだが、技巧と意匠が発揮された珠玉の超個性ブランド
- EYEVAN 7285の眼鏡は再生産されないため、定番モデルというものが存在しない
- 一部のデザインを継続しており、これがブランドの象徴となっている
定番がなくても名作は生まれます。歴代の中でも特に良いと語り継がれるやつですね。そういうものを作れるのが真の醍醐味かもしれませんね。