こんにちは、遊佐です。
今回のブログはカルティエのヴィンテージ腕時計「マストタンク」をレビューしていきます。
マストタンクは購入の機会をうかがっていた時計の一つでした。より良い状態の個体を選別していると購入時期がどんどん後ろ倒しになっていきましたが、そんな悠長なことをしている間に価格がどんどん上がっていく始末。2010年代の頃は価格がまだ10万円代で気軽に購入できる時計だったのですが、今では40万円代に突入しており、この10年で約3倍近く価格が上昇しています。現行のタンクマストも2021年発売当初は30万円代前半で購入できましたが今では60万円越えてますからね。
いよいよケリをつけないといかんなと思っていた矢先にデッドストック品があらわれて、この度めでたく購入にいたりました。
先日もカルティエが価格改定をしており価格はどんどん上がる一方です。ご検討されている方、やはりはやめの購入が良さそうです。
- カルティエのマストタンクの評判は?
- マストタンクは廉価モデルなのか?
- マストタンクとタンクマストの違いとは?
【70年〜80年代ヴィンテージ】カルティエの手巻き式マストタンクLM(tank must de cartier)をレビュー!やはり「持つべき」時計です。

カルティエ
カルティエは1847年にルイ・フランソワ・カルティエが創業。宝飾品や高級時計を扱う世界5大ジュエラーの1角にして王室御用達の権威あるブランドです。20世紀のイギリス国王エドワード7世から「王の宝石商、宝石商の王」と称賛されたのは有名な話ですね。
カルティエは一般的に宝飾品のイメージが強いかもしれませんが、歴史上初めて腕時計を誕生させたブランドとして知られています。きっかけは20世紀初頭、カルティエ3代目当主と友人であるブラジル人飛行士のアルベルト・サントス・デュモン氏とのやりとりでした。当時の携帯時計といえば懐中時計が主。時間を確認する際に飛行機を操縦しながらポケットから懐中時計を取り出す動作が煩わしいという話を聞いたカルティエ氏が、1904年にサントス氏に贈った時計がサントスシリーズの祖であるサントスデュモンでした。これはいわゆる特注品でしたが1911年に市販化されたことで世界初の実用腕時計として世に出ることになります。
この「実用」というのは腕時計の概念のことを指します。というのも腕時計自体はサントス以前にも存在しており記録でも確認されています。ですがそれは女性の装飾品だったり懐中時計をそのまま腕に巻き付けたようなデザインだったりと、その物体に腕時計という概念はありませんでした。その点、サントスはラグを作ってベルトをはめこむという今では当たり前の腕時計の構造と概念を初めて構築した腕時計なんです。
サントス物語の系譜を継ぐ名品「サントスカレ」は僕も愛用している時計の一つです。
マストタンクとは
マストタンクのレビューに入る前にマストタンクの歴史について少し触れておきたいと思います。
転換点
マストタンクはカルティエウォッチのタンクシリーズの一つで、1978年に誕生しています。正式名称はタンクマストドゥカルティエ。この「持つべき」という名前には非常に重要な意味があります。というのもマストタンクはこれまでのモデルとは異なるコンセプトのもと作られており、カルティエの転換点になったモデルなんです。
きっかけとなったのは1960年〜70年代の経営不振。創業家一族の経営に限界がきており、店舗や商標権などが切り売りされたことで資産価値がどんどん目減りしていっていました。さらに当時はクオーツショックに端を発した安価品の流れがきており、カルティエはそれまでの高級路線に固執したため、時代の大波に飲み込まれかけていました。
そんな中で起死回生の一打として生まれたのがマストタンクでした。富裕層に限定されていた客層をマス層にまで拡大するために、価格を抑えたいわゆるディフュージョンモデルとしてマストタンクを打ち出したのです。コストをおさえつつもカルティエのラグジュアリーが表現されたマストタンクは見事大ヒットし会社は危機を脱します。
また、客層を限定しなくなったことにより広義のファッション性を帯びるようになったのも重要なポイントです。アンディウォーホルやイヴ・サンローランなどマストタンク愛用者が続々と現れます。
マストタンクは2000年代に廃盤となりますが、人気は根強くその後も二次流通での取引は安定して続いています。
タンクマストとの違い
現行モデルにタンクマストというモデルがありますが、これは2021年に発表されたマストタンクの後継にあたります。マストタンク同様に価格が抑えられていることに加えて、モダンに生まれ変わったデザインは若いファッション層を取り込むことに成功しています。特にインデックスとレイルウェイを排した針だけのシンプルな黒文字盤デザインはとりわけファッション性が高く、腕時計というよりジュエリー感覚で着用している人が多いですね。さらにソーラー電池を採用するモデルがあったりなどエコロジーへの配慮も見られ、カルティエの新しい柱としてブランドを牽引しています。
手巻き式マストタンクLM
初期型モデル
お待たせしました。ようやく本題です。
今回購入したマストタンクは1970年代〜1980年代に作られた初期作手巻き式モデルのLMサイズ。

冒頭で話したようにデッドストック品で、そして国際永久保証カード等付属品完備の完全無欠品です。当たり前ですが傷など使用感が全くく、ある意味ヴィンテージ感がありません。とはいえ少なくとも生産から40年以上は経っているので経年劣化していてもおかしくないのですがこの個体には劣化が一切見られず、ギャランティや説明書などの付属品ですら新品同様。一式まるごと現代にタイムスリップしてきたような感じです。
グレーのベルトは後述していますが別途購入したもので、隣のブラウンのオリジナルベルトが付属されていました。
それでは細部を見ていきます。

must deの文字が特徴的なマストタンク。そしてローマンインデックスにレイルウェイ、Ⅶの隠し文字、そしてカボションリューズといったデザインは腕時計史の中でも普遍的デザインと呼べるものではないでしょうか。
さらにマストタンクの象徴ともいえるアイボリー文字盤。この色はカルティエウォッチの中でも独特でマストタンクの個性を感じられるポイントです。アイボリーの色味には個体差はあるみたいで薄かったり濃かったりとグラデーションがあります。
ちなみに6時位置のSWISS表記は生産初期の頃のデザインで、以降はSWISSMADE表記に変わっています。

カルティエの尾錠デザイン好きなんですよね。
個体によってはこの純正尾錠がないものもあるので、こだわっておきたい箇所です。
ヴェルメイユ

ケースはスターリングシルバーに18kがコーティングされたヴェルメイユ。コストを抑えたといいつつ、しっかりと貴金属を使用しているあたりにカルティエの矜持を感じます。これがいわゆる金メッキだったら本末転倒粗悪品で終わっていたかもしれません。
金メッキとヴェルメイユはゴールドをコーティングするという意味では同じなのですが、クオリティがまるて違います。金メッキは銅や真鍮に純度の低いゴールドを薄くコーティングしたもので、やはりチープ感は否めないし、薄いコーティングは剥がれやすいんですね。一方ヴェルメイユはスターリングシルバーに15k以上のゴールドを2.5ミクロン以上の厚さでコーティングされているものであると明確に規定されています。

マストタンクの場合はヴェルメイユの規定を超える18kかつ20ミクロン(金箔200枚相当)という純度の高い金がたっぷりと厚塗りされているので、見た目は金無垢に近い。
そして下地がスターリングシルバーですから、もはやマストタンクは高級ジュエリーみたいなものなんですよね。

裏にヴェルメイユに関する情報が刻印されています。製造年度によって記載の仕方が変わるようで、この個体は初期モデルであることがわかります。
「925、ARGENT」はシルバー925すなわちスターリングシルバーの意。
「PLAQUE OR G 20μ」は20ミクロンの金がコーティングされている意。
ヴェルメイユが金メッキとは異なるとはいえ塗装には違いないので長年使っていくと塗装剥がれや剥がれた箇所の下地のシルバーが変色したりという劣化現象は起きます。ですが再塗装できるので心配いりません。尚、今回紹介している個体が40年眠ったままの状態だったことを考えると、使用頻度0の場合は経年劣化しないようです。
LMのサイズ感

サイズ展開はSM、MM、LM、XLで、今回紹介しているのはLMサイズ。
縦径31cm、横径23.5cm。僕の腕周りは15mm程度です。これだけ小ぶりなので服装の邪魔になることはありません。そして合わせる服装も選びません。ジャケパンのような綺麗目はもちろん写真のようにカジュアルなスタイルにもはまりますよ。
現在と昔とではLMサイズの設定が大きく異なっており、昔のLMはご覧の通り小ぶりです。現行タンクマストSM(縦径29.5cm、横径22cm)とLM(縦径33.7cm、横径25.5cm)の中間程度で、これが実に良いサイズ感なんですよね。現行では味わえないこともあって、ヴィンテージ時計の優位性の一つがここにあります。
文字盤のバリエーション
マストタンクは生産期間が長かったこともあって文字盤のバリエーションがとにかく多い。文字盤の色違いやインデックスのデザイン、そもそものデザインが違ったり。
その中でも最もオーソドックスかつ人気のデザインが今回ご紹介しているアイボリー文字盤です。
希少性の高さでいえばプレマストタンクです。マストタンクが発売される前にニューヨークのブティックで先行発売された期間限定モデルで、mustdeの文字がなかったりリューズの形状が長かったりとタンクルイにそっくりのデザイン。資料が少ないため色々と謎が多いモデルです。間違いなく希少性は高くコレクション性は抜群なのですが、見た目がタンクルイなのでそれだったらタンクルイ買うかなと笑。というのもマストタンクは出自こそディフュージョンラインですが、今ではマストタンクだから良いと言えるようなマストタンク特有の付加価値が備わっているように思いますので、個人的にはマストタンクはアイボリー文字盤かつmustde文字が入った王道モデルがおすすめですかね。あ、黒文字盤も捨て難いか。
ベルトは別途注文

マストタンクのベルトはブラックかブラウンのどちらにしようかと考えていたのですが、インスタグラムでマストタンク用ベルトを販売しているアカウントを見つけまして、良いかもと思いすぐに注文しました。
uchimura-watch-eyewear-repair.co.jp
「ウチムラ」というショップです。時計の修理、販売を行っており、安心して永く楽しめるヴィンテージウォッチを紹介してくれています。特にマストタンクを重点的に取り扱っているようで、専用ベルトを作成されているあたりからも熱量を感じます。

購入したのはクロコダイルエレファントグレー(マストタンクLM専用)というモデル。
めちゃくちゃ良い。
エレファントグレーという色味が文字盤とケースの色に合う。光沢は控えめ、かつフラットな文字盤に合わせた厚みのないデザインはマストタンクとの一体感を生み、まさに専用ベルトといった感じです。オーストラリアのベルト職人がハンドステッチで仕上げているそうで、クラフト感がありながらも細番手の糸で丁寧に縫い上げられています。
マストタンクはベルト幅が17mmと特殊なのでサードパーティで良いのがなかなか見つからないんですよね。
本当に気に入って使っています。ありがとうございます。
このたびオンラインでの買い物でしたが対応が実に丁寧で誠実でした。このぐらいの規模感の個店には接客マナー皆無の横柄無愛想なスタッフさんがいたりすることがあって正直気分悪くなる時があるのですが、ウチムラさんは本当に好印象でした。僕の好きな眼鏡の販売もされていたりと魅力的なお店で、一度実店舗へ行ってみたいなと思っています。
まとめ
- カルティエは世界5代ジュエラーの1つにして王室御用達ブランド
- 世界で初めて腕時計を誕生させたのがカルティエ
- マストタンクはカルティエの腕時計を普及させたという意味でカルティエ史における重要な転換点となったモデル
- スターリングシルバーに18kをたっぷりとコーティングしたヴェルメイユケースは金メッキとは一線を画し、金無垢に近い見た目。コストを抑えつつもカルティエのラグジュアリーが表現されている。
- 男性の方であればLMサイズがおすすめ。現行にはない絶妙なサイズ感。
「持つべき」時計。