こんにちは、遊佐です。
自分のこれまでのファッションライフにおいて、セレクトショップは欠かせない存在でした。特に大学時代から20代の頃にかけては、何かいいものが手に入りそうなワクワク感と、お店に行くこと自体が楽しかったりと、自分にとって特別なお店でした。
ビームス、ユナイテッドアローズ、シップス、トゥモローランド、エディフィス、ナノユニバース、アメリカンラグシーなど、お店巡りが本当に楽しかった。
30代後半になり、さすがに当時ほどのフレッシュな感情を持ち合わせていないにしても、今でも定期的になにかしら買い物をさせてもらったりとお世話になっているのですが・・・最近とんと面白みがないと感じます。
セレクトショップの同質化は2010年代から徐々に進行しており、ここ3、4年で一気にきたなという感じです。
今でも各ショップにそれぞれの色はあるものの、セレクトショップという大きな枠の色がうすーくなってきているのを強く感じます。昔あった大きな存在感がない。
昔はよかったなんて、いかにも脳が老化してそうな人が言いそうな言葉ですが、昔からずっとセレクトショップを楽しんできた者としては、今のセレクトショップがどうしても見劣りしてしまう。
そこで今回のブログでは、セレクトショップの今後について勝手に考察していこうと思います。
- セレクトショップはオワコンか?もう厳しいか?
- セレクトショップに通っていた頃が懐かしい
- どこも似たような商品ばかりでつまらない
【転換期が来ている】セレクトショップはオワコンか?これからは個人の時代へ
大手セレクトショップは大衆化
一口にセレクトショップと言ってもさまざまで、「同質化している」とよく言われがちなのは大手セレクトです。
どこいっても同じセレクト品があったり、似たようなデザインのオリジナルが並んている。本来は自社に合ったブランドを自社らしい編集をして、競争力のある世界であるべきなんですよね。
企業の規模が大きくなると同質化は仕方がないことで、よく言えば馴染みがあると言えるし、悪く言えば大衆化。
そして同質化はこの大衆化の文脈で語られます。昔のセレクトショップに対する特別感、ハイソな感じを持っている人ほど、大衆化を感じ、セレクトショップの価値が相対的に下がります。逆に今の10代、20代は当然ながら現在のセレクトショップしか知らないので、ギャップがなく、無難に感じてもネガティブな意味合いはないのではないでしょうか。
全てはセレクトショップに対する価値基準の話で、価値基準を下げることで、大手セレクトはそういうものだと考えられ、ネガティブギャップをなくせる。マス層向けに作られているのだと考えることで、セレオリはそういうものだと受け止めることができる。
松竹梅ではないですが、そういう大衆向けオリジナルがあるからこそ、ハイエンドライン位置付けのオリジナルが出てきます。
CABAN、COLUMN、super a market、H BEAUTY&YOUTH、ドゥロワー、deuxieme classe
これらはファッション感度が高い人たちがターゲットのセレオリやコンセプトショップ。伝え方、演出にも違いがあり、名前を変えたり、直営店を構えたりしてセレオリっぽさをなくしています。実際これがオリジナルだということを知らない人も少なくありません。
マス層向けのものがあるからこそ引き立つ世界であるので、大衆と高級の両方を抱えるのが基本というわけですが、これまたスタンダードな戦い方であり、決定的な差別化にはなっていません。
小規模セレクトショップ
大手セレクトに比べて、個性や趣味性を発揮しているのが小中規模集団。
レショップ、1LDK、ライブラリー。地方店も含めるともっと増える。さきほど挙げたショップのsuper a market、H BEAUTY&YOUTHなどもこの集団に入れることができます。
店舗展開が限定的なためマス層の認知度は低く、加えて扱っている商品が感度高めなので、ターゲットが自ずと絞られますね。ファッションの世界において、「少数」「限定」「選別」概念はおしゃれなポジションをとれますし、親しみのなさや受け入れにくさというデメリットも、この領域では武器になります。
収益と矛盾するようですが、あまり流行りすぎないようにコントロールして、規模を追わないのがポイントです。
ただし、このポジションへの参入者も増えており、取り扱いブランドやその編集に関しても被り気味なので、大手同様に差別化が求められます。
セレクトショップの転換期
大手セレクトはその規模を活かしてマス層を狙う。小中規模はニッチを狙う。
どちらの領域にせよ、参入者が増えて商品の差別化が難しくなっているため、価値が相対的に低下してきています。
つまるところ、ショップに求められているのは、ここで買う意味、必要性です。
消費者の被服費は下がり、市場も引き続き縮小傾向。
多少高値でも作れば売れるという時代は遥か昔で、今やコスパ重視の価値観が広がっていかにお得に買えるかが消費者、特にマス層の行動原理です。
それにマス層だけではなく、ファッション感度の高い人ですら行動変容が明らか。今やセレクトショップが仕入れているブランドをもっと安く買えるBtoCあるいはCtoC型のオンラインサイトがグローバルに存在するので、セレクトショップで買う必要性がますますなくなってきています。
そして収益性向上のためとはいえオリジナルのシェア率が高くなり、セレクトショップという名前自体がもはや形骸化しています。肝心の製品はいうと競争力がなく、ここのターゲット層はルメールが手がける「ユニクロU」に持っていかれている始末。
どこでも買える。他で買ったほうが安い。
さてここで買う意味、必要性とは?という話です。
大衆化とはかけ離れたキラキラとした存在感を放ち、心躍る提案をしてくれて、消費者を一歩先へ導いてきたセレクトショップにいよいよ転換期が来ているのではと感じます。セレクトショップの概念及び枠組みの再構築が必要でしょう。
商品及びショップの同質化が不可逆的に進む中、どこで他と差を付けるかとなると、やはりサービスによる体験価値。
そしてそれを担うのが「人」です。
メーカー直営店
僕は最近、メーカー直営のお店を覗くことが多いです。いわゆる百貨店ブランドではなく、一般的に卸のイメージが強いメーカーが直営するお店ですね。
どこも共通しているのが、専業アイテムだけでなくトータルでMD展開をしているということ。ジャケットやアウター専業だったのが、パンツやニット、シューズまで展開。パンツ専業だったのが、ジャケットを始めたりと。
専業以外のアイテムってクオリティどうなん?餅は餅屋やろと懸念してしまうところですが、これが申し分ないどころか、かなりいいんですよね。もうここでトータルで買っちゃおうという気にさえなります。それくらい完成度が高く、一つのブランドでルックを組む意味と大切さを改めて感じる次第です。
当たり前ですがスタッフはメーカー直属なので、ブランドの世界観と商品の価値をきちんと伝えられる。
これかなり重要です。
というのもセレクトショップは一つ一つのブランドの扱いが時に雑だったりするんですよね。メーカーの人からしたら、あっちのブランドの方が目立ってるやん、もっといい場所に置いてくれよとか、お客さんにもっときちんと説明してくれよなどと思うこともきっとあるでしょう。
本来であれは利益率の面や商品価値を正しく伝えるためにも、自分達で企画して作ったものは自分達で売るのが一番いいのですが、自ら販売手段を持たない場合は、小売店に頼るしかありません。そしてそこにこそセレクトショップの存在価値がありました。
ですが今はITが発達し、従来のようなサプライチェーンを構築する必要がなくなってきているので、メーカーがセレクトショップに頼らずとも消費者に直接販売できるようになってきています。より効率的により正しく商品価値を消費者に届けられるようになっているのです。
個の力
先日書いたこの記事で言いたかったのは、個人の影響力が今こそ求められているということです。そして、その個人の価値は今はまだ不確定であやしいものかもしれないけど、いつか広く一般的なレベルになる可能性を秘めているということです。
僕がなぜ名もなきブランドの商品を買っていたのか?
それは自分が信頼している人がすすめていたから。
そしてその商品は確かにいいものだと納得できたから。
これはある意味宗教の世界ですが、現代において近しいことをやっているのがインフルエンサーと呼ばれる人たちです。
これまでセレクトショップの競合他社は同じくセレクトショップだったが、これからは個人インフルエンサーが立ちはだかってきます。
個人インフルエンサーたちは「差」をつけてきます。自らが影響力を持つことでブランドを作り、個性的なデザインの洋服をD2C形態で適正価格にて販売する。こまわりのきく個人、小規模組織だからこそできることで、逆にいえば大手セレクトショップではできない。かなり脅威に感じているはずです。
自分達に足りないことは、自分達で一から始めるよりも。お金を出してよそから買ってくるのが手っ取り早い。先日はD2Cブランドのコヒナがサザビーに事業譲渡しています。
今後は将来性のある個人D2Cブランドの買収も増えていくでしょう。買収とまではいかなくでも、ブランド支援という形で関わってくると思われますし、そしてそれがセレクトショップというかアパレル企業の基本動作になってくると思います。
社内インフルエンサー
社内にもインフルエンサーを作る動きが加速しています。
昔、カリスマ店員という言葉が流行りましたが、要はあれの現代版です。
BEAMSはスタッフにSNSアカウントを持たせて発信させたり、特に影響のあるスタッフには本を出版させたり、オンライン個人商店を持たせたりと、個の開発に取り組んでいます。
フォロワーを集めて、お店の売上を牽引したり、お店の認知度を上げてくれるので、会社にとって貴重な人材なわけです。
BEMASは中村氏や西口氏、既に退社して独立している高田氏など、著名な社内インフルエンサーを輩出しており、彼らは商品の売れ行きに大きな影響力を持っています。
店舗のスタッフにも同じように影響力を持ってもらおうというわけですが、前者と後者ではテイストが少々異なります。
前者はオフィスワーカーなので、消費者との直接的な接点がありません。たまにトークショーなどで会えるくらい。いわば画面の向こう側にいる芸能人みたいなものです。
後者も目指すは芸能人なのですが、画面の向こう側というよりは、会いに行けるアイドルに近い。
僕たちは贔屓にするブランドやショップの洋服を買うためにより一層のお金を支払うわけですが、そもそもこれは企業あるいはブランドを応援するためとも言え、そういう意味で、これからは商品対価が推しメンを応援するための投げ銭みたいになるかもしれませんね。
社内インフルエンサーを作る。これまたセレクトショップの基本動作となるでしょう。
まとめ
- 大手セレクトショップはマス層を狙い、小中規模のセレクトショップはニッチを狙う。いずれにせよ参入者が増え続けるあまり、価値が相対的に低下し続けている。
- どこでも同じものを安く買える時代になり、セレクトショップで買い物をする意味や必要性が求められている
- ITの進歩で、サプライチェーンの中に従来のセレクトショップが必要ではなくなってきている
- 個人の力が必要になってくる。企業はその規模を活かして個に投資する時代に?
セレクトショップ世代の僕としては、華やかで活気のある姿をまた見たいと思うばかりです。とはいえ、まず「セレクトショップ」という名前を変えましょう。