皆さんこんにちは。遊佐です。
昨年の夏に富山へ行った際に、久しぶりに青春を謳歌した場所へ寄り道してきました。
そこは岩瀬浜海水浴場です。
学生時代によく遊びに行っていた場所で、ここに来ると懐かしい思い出が蘇ってきます。
20歳前後の頃で毎日が夏休み?で、はしゃぎまくっていましたね。
学生時代はそんな楽しいことだけではなく、失敗や失恋など辛い経験もしており、そういった出来事は強く記憶に残っているので今でも思い出すことが出来ます。
ところで大学生活で経験する沢山の出来事の中で、記憶されるものとされていないもの、正確にいうと思い出せるもの、思い出せないものの差とは一体何だと思いますか?
その大きな要因の一つは感情です。
「楽しかった」「驚いた」「悲しかった」「辛かった」
こういった感情が発生している出来事、エピソードは記憶に残りやすく、その感情の度合いが強ければ強いほどより記憶されやすいのです。
では普段僕たちが何気なく使っている言葉「記憶」とはそもそも何なのか。
今回は記憶のシステムについて書いていきます。
そしてこの記憶のシステムの上に成り立つ学習法を最後にまとめます。
それでは早速いきましょう!
記憶とは
記憶とは一言でいうと、知識の保存です。
そして記憶は4つのプロセスから構成されています。
- 記銘→ 覚える=INPUT
- 保持→ 覚えておく=KEEP
- 想起→ 思い出す、又は検索=SEARCH
- 忘却→ 忘れる=DELEATE
記憶には種類があり、その内容によって覚え方と保存場所が異なります。
分類の仕方が大きく二つありますのでそれぞれお伝えしていきます。
二つの分類名をそれぞれ「記憶の内容」と「記憶の期間」としました。
まずは記憶の内容です。
記憶の内容
陳述記憶
陳述記憶とは名前の通り、言葉や文字で表せる記憶のことです。
陳述記憶はさらに二つのカテゴリーに分けられます。
意味記憶
意味記憶とは例えば受験勉強ですね。
英単語や化学式、歴史年号など暗記モノです。
繰り返し学習していく中で徐々に記憶として頭に定着していきます。
エピソード記憶
エピソード記憶とは経験です。
冒頭で書きました岩瀬浜の楽しかった出来事や、仕事で大失敗した時の辛い出来事、失恋した時の悲しい出来事が「エピソード」として記憶に残ります。
でも、
あんなに頑張った受験勉強の内容、まあ覚えていないですよね。
色んな出来事が起こっていた大学生活。なのに覚えているもの、思い出せるものっていつも同じですよね。
これら陳述記憶の特徴は、年月が経つといつのまにか忘れてしまっているケースが多いということです。
手続き記憶
手続き記憶とは運転やスポーツ、楽器演奏など身体で覚える記憶で、運動記憶とも呼ばれます。
先ほど陳述記憶が忘れやすいモノであると書きましたが、これに対して手続き記憶は忘れないという特徴を持っています。
子供の頃に一生懸命練習した自転車、今でも乗れますよね?
頑張って覚えたクロールや平泳ぎ、忘れないですよね?
このように繰り返し身体で覚えたモノは、時が経っても忘れることがないのです。
では次に、記憶を時間の観点から分類してみます。
記憶の期間
短期記憶
短期記憶とは一時的に脳に保存される記憶です。
脳を構成する三大要素「大脳」の一部「大脳辺縁系」に、海馬という器官があるのですが、この海馬に今さっき経験したことや覚えたことを一時的に格納することが出来るんです。
例えば、上司に「やっておいて!」と頼まれた仕事や、今まさに誰かと話している内容です。
これらのシーンでもし急に誰かに話しかけられたら、さっきまでのことなんてもう忘れちゃってますよね。
意識が別のことにとられたり、集中力が途切れたりすると短期記憶はすぐに消失してしまうんです。
人が数分の間に覚えていられる記憶の数はだいたい7個程で、マジカルナンバーと呼ばれています。
長期記憶
長期記憶とは、家族や友達の顔、自分の携帯番号、家までの帰り方など、半永久的に覚えていられる記憶です。
長期記憶の保存先は短期記憶とは別の場所にあります。
それが人間脳と呼ばれる大脳の表層部分「大脳新皮質」。
短期記憶がこの大脳新皮質へ送られることで長期記憶となるのです。
ですが全ての短期記憶が送られるのではなく、その中の重要なモノだけが長期記憶として保存されます。
ではこの「重要」であるというのは具体的にどういうことなのかをこ説明いたします。
脳の司令塔「前頭葉」
一時的に覚えた記憶を重要であると判断する器官が脳内にあります。
それが前頭葉という大脳新皮質のパーツで、ちょうど額の裏側に位置します。
前頭葉は脳内で最も高次な存在として思考や判断を司っており、脳内の他の器官が感知するあらゆるモノの情報を統合して最終的に判断する司令塔です。
さて今回の司令塔の仕事は短期記憶の取捨選択です。
つまり海馬に入ってきた一時的な記憶の内、前頭葉が重要と判断したモノが長期記憶として大脳新皮質へと送られ保存される仕組みとなります。
さて、ここまで記憶のシステムについて書いてきました。
一旦まとめておきます。
前半のまとめ
記憶の分類法①
- 陳述記憶→文字や言葉で表せる記憶で、忘れやすい。
- 手続き記憶→運転やスポーツなどの運動記憶で、忘れない。
記憶の分類法②
- 短期記憶→今さっき覚えた記憶。海馬に一時的に記憶されるがすぐに忘れる。
- 長期記憶→短期記憶の中で脳の司令塔「前頭葉」が重要と判断し、大脳新皮質に移行させた記憶。忘れにくい。
ここまではOKでしょうか?
記憶のシステムをこれまで解説してきた理由は、今からお伝えする学習法を脳科学の見地から皆さんに見てもらう為です。
もうこれを言いたい為だけに、この記事を書きました。
記憶のシステムを理解することで、学習の本質を知ることが出来ます。
ところで皆さん、子供の頃に親や先生からよく言われていた精神論のような言葉って覚えていますか?
- 「繰り返しやりましょう」
- 「声に出して読みましょう」
言われるがままにやっていたことですが、いずれの学習法も真実でした。
言われた通りにやれば、確かによく覚え、知らぬ間に上達していたものです。
でも何故そうしなければいけないのかを説明してくれた先生は一人もいませんでしたね。
言っている先生達ですら、その理由を恐らくは分かっていなかったのではないでしょうか。
しかしこれらの学習法が正しいことであるという根拠を脳科学、すなわち記憶のシステムの見地からであれば示すことが出来ます。
ポイントは何故その学習法が正しいかです。
それでは後半「脳科学による学習法」にまいります。
脳科学による学習法
学習法の勘違い
今回は需要が高いスキル「英語」や「プログラミング」を例にして書いていきます。
まず、英語やプログラミングを言葉や文字の記憶=陳述記憶と思っている方がいらっしゃいましたら、それはちょっと違うということを先にお伝えしておきます。
教材をひたすら読んで、単語や文法、関数を頭の中にインプットしたとしても、いざ実際にやってみようとしても出来ません。
英語であれば、喋れない。
プログラミングであれば、手が動かない。
この「喋れない、動かない」というのがポイント。
つまり英語やプログラミングはスポーツと同じ身体を動かさなければいけないカテゴリーということです。
英語やプログラミングは「教材を読む」という観点から、記憶のシステムで書いた陳述記憶だと思われがちですが、実際は運動性のある手続き記憶です。
運動と脳
手続き記憶であるのならば、スポーツとやることは同じです。
それはつまり、何度も繰り返し練習して身体に覚えさせることです。
どんなスポーツでも上達の基本は反復練習ですよね。
身体が動きを覚えたら、頭で考えなくても自然にパッと動くことが出来ます。
でも何故反復練習をすると身体が自然に動くことが出来るのでしょうか。
それは身体が動かしているのはあくまでも脳だからです。
例えばサッカーを例に出しましょう。
ボールを蹴るというシンプルな行為は、以下のような処理に分解されます。
全て脳内で行われているものです。
- ボールを見る
- ボールを認識する
- ボールの位置、まわりの空間を確認する
- ボールを蹴ろうとする
- 筋肉へボールを蹴る指示を出す
これら一連の処理を無事に終えた時に、初めてボールを蹴ることが出来ます。
初めてボールを蹴った時の動きは当然ぎこちないはずです。
でも何回も同じことをする、すなわち反復練習をしていくことで、これら一連の処理がスムーズに実行されるようになります。
するとやがてボールを蹴るという行為が上達していくのです。
脳科学的にいうと神経細胞の繋がりが強くなり、脳から身体の筋肉への電気信号が活性します。
プログラミングも同じで、大脳新皮質の前頭連合野、運動野、側頭連合野などの様々な領域が連携し、身体へ「入力せよ」との最終指令が下されます。
小脳への記憶
さらにこの「ボールを蹴る」一連の処理を脳内に保存することができます。
その保存場所が、脳を構成する三大要素の1つ「小脳」。
つまり身体に覚えさせるというプロジェクトの最終形態は、「小脳」に一連の処理を記憶させることなんです。
陳述記憶とは海馬を経て、大脳新皮質へ保存されることを先に書きましたが、手続き記憶は小脳へ記憶されます。
ここで僕の実体験を話しておきます。
僕は昔5歳の頃からヴァイオリンを10年程習ってきまして、コンサートではセカンドヴァイオリンのソリストも務めていました。画像の楽譜は実際に使っていたものです。
この実績は毎日の膨大な反復練習の賜物です。おかげでその後どれだけ弾かない期間があってもいつだってスムーズに同じ音色を出すことが出来ます。
師事していたヴァイオリンの先生が言ってくれた言葉を今でも覚えています。
僕のヴァイオリンを聞いて、「こういう練習の仕方が出来る子は、どんな分野でも上達が早い」と言ってくれました。
当時はもちろんその理由がわかりませんでしたが、学習のコツというものが存在することを先生は言ってくれていたのです。
「一芸は道に通ずる」という言葉がありますが、まさにそれですね。
まとめ
さて、英語やプログラミングの話に戻ります。
これらが身体で覚えるものであるという事実が出た以上、とるべき学習法は
とにかく喋れ
とにかく手を動かせ
です。
ある程度、単語や文法を頭に入れた後はひたすら動くのみ。
先述した記憶の4過程でいうと、記銘も大事だけど想起が本当に大事ということです。
覚えたことは、喋って、手を動かして何度も何度も思い出して下さい。
これが所謂「アウトプットはインプット以上に大事」ということです。
想起=アウトプット=運動です。
それでは最後にまとめます。
- 英語やプログラミングは手続き記憶のカテゴリー、すなわち身体に覚えさせるモノ
- 身体を動かしているのはあくまで脳である
- 身体に覚えさせるとは、脳内から筋肉への電気信号処理をスムーズに行うこと。さらにその一連の処理を小脳に長期保存させること。
- 英語やプログラミング学習で大切なことは、インプットよりも運動であるアウトプット
さていかがだったでしょうか。
今回は脳の記憶システムと、それを基にした学習法の検証をしてきました。
次回の脳科学では、記憶システムを逆手にとった学習法を書きたいと思います。
予告キーワードは「脳を支配する」です。
最後まで読んで頂きましてありがとうございます。
ちなみに冒頭でご紹介した岩瀬浜海水浴場は、富山駅北から出ているライトレールに乗ると行けますよ!
ご興味のある方は是非一度行ってみて下さい。